邦楽アルバムオールタイムベスト100 in 2024:101位から500位

2024年に行った、邦楽アルバムオールタイムベスト100企画の101位から500位を公開する。ベスト100からこぼれ落ちたものがいくつか拾えているのではないかと思う。簡単にだが、気になるもの、注目すべきものに関しては、取り上げてコメントを入れてみた。なお、本稿では、自分の好みのアルバムではなく、あくまでもその順位になったのが興味深いものを取り上げている。
ちなみに100位までは同点による同順位を避けるために、得票によって順位を調整したが、101位以下はそれを行っていないので、同順位の作品が沢山ある。

101位から150位

『氷の世界』井上陽水(102位)、『B-2 Unit』坂本龍一(113位)、『VISITORS』佐野元春(125位)、『MAKING THE ROAD』Hi-STANDARD(143位)、 『ジャックスの世界』ジャックス(143位) 『み空』金延幸子(149位)と、当然と言えば当然だが、邦楽名盤ランキング常連アルバムが多く101位から150位にあつまった。それぞれ今回の投票でなぜこの順位だったか考察できなくもないが、紙面の関係で割愛。みなさんそれぞれ考察してみると面白いと思う。

　仲良しの同級生が進学を機に離ればなれになる、その時の二人の心情をコンセプトに作成されたEPで、SNSでも20年代シューゲイズの名作としてたびたび取り上げられ話題になっていたkurayamisakaの『kimi wo omotte iru』が103位 。2022年のリリースで、kurayamisaka自体、まだフルアルバムをリリースしていない若手バンドにもかかわらずこの順位は凄い。シューゲイズ文脈で語られているが必ずしもシューゲイズ的手法に囚われてはいない所もミソ。ちょっと騒がれすぎなのが本人たちにとってあまり良くないのではと老婆心ながら思ってしまうが、本作の成功にとらわれずに自由に活動してほしい。

　106位 『エアにに』長谷川白紙(2019年)。前回82位だったが今回は100位圏外。丁度24年に新作のリリースがあり、新作にもそれなりの票が来てばらけてしまったのも圏外の要因か。

116位 『MOTHER』LUNA SEA(1994)。ヴィジュアル系はこのようなランキングではまるっきりランクインしないという指摘、批判を頂いたが、V系最高位は本作の116位だった。ヒットしたラルクやGLAYではなく、LUNA SEAが最上位だったのも興味深い。

128位 『呼吸』Lily Chou-Chou(2001年)。岩井俊二の映画『リリィ・シュシュのすべて』の劇中に登場するアーティスト、リリィ・シュシュによるアルバムというコンセプトで作成された一枚。

同じく、147位の 『結束バンド』（結束バンド）はTVアニメ『ぼっち・ざ・ろっく』で使われた楽曲が収録されているが、アニメサントラではなく、主人公たちがやっているバンド、結束バンドのオリジナルアルバムであるようなつくりになっている。架空のバンドである事を逆手にとり、邦ロックの担い手である複数のバンドのライターから曲を書き下ろしてもらい、ギターオリエンテッドなアレンジを施す事で、2000年以降の邦ロックのエッセンスを抽出したような純度の高い優れたギターロックアルバムになっている。物語に出てくる音楽にまつあるキャラクターによる作品という事でアルバムを作成した方が、単なるサントラとしてもアルバムとしての強度も評価も高くなる傾向にある。特に本作の成功は今後大きな影響をアニメサントラシーンのみならず邦楽ロックにも与えていくような気がする。

151位から200位

　151位 『恋人へ』Lamp(2004年) 。海外からの逆輸入のような形で近年評価や注目度が上がっているLamp。惜しくも100位圏内にはランクインせず。

　196位 『GREEN』吉村弘。ニュー・エイジ/アンビエントの名盤として再注目されている本作もランクインするかと思ったがランクインせず。

201位から250位

　201位 『CEREMONY』King Gnu。209位 『RADWIMPS4おかずのごはん』RADWIMPS。それぞれ人気バンドの代表作だが、200位代どまり。彼らも前回アジカンやバンプがランクインしなかったの同様に参加世代のメインの層がずれたらランクインしそうではある。

　201位 『GUSTO』Especia(2014) 。所謂「楽曲派」アイドルの代表格ともいえる一枚。perfumeを除けば彼女たちがアイドル最高位であった。アイドルのみを集めたランキングもまた別の記事でとりあげたい。

　213位 『シングル・マン』RCサクセション、214位 『軋轢』フリクション、215位 『THE ROOSTERS』THE ROOSTERS、218位 『JAPANESE GIRL』矢野顕子。228位 『SATORI』フラワー・トラベリン・バンド。201位から250位の間にも邦楽名盤のクラシックアルバムが固まった。特に213位の『シングル・マン』は前回100圏内の上位にランクインしていただけにこれだけ順位を落とした原因も気になる。RCを支持していた層が比較的年齢が上で、今回そのような参加者が少なかったからだと踏んでいるのだが……。

　224位 『Vision Creation Newsun』ボアダムス。日本を代表するノイズバンドで、海外の評価も高い本作だが、本作を含め主な作品群がサブスク未解禁なこともあってかふるわず。一方メンバーの一人である山本精一関連のプロジェクトは上位に来なかったものの、票自体は複数のプロジェクトにまたがって沢山来ていた。

251位から300位

　276位 『結晶 SOUL LIBERATION』ORIGINAL LOVE。317位 『Bellissima!』pizzicato five。フリッパーズ・ギターはオリジナルアルバム三作すべて100位圏内だったが、彼ら同様渋谷系にくくられるORIGINAL LOVEとpizzicato fiveの最高位はこの二作だった。

301位から350位

317位 『BLUE BLOOD』X。日本のメタル史にのみならず、世界的に見ても水準の高いメタルアルバムだと思うが、この順位。

351位から400位

　397位 『AIR オリジナル・サウンドトラック』VISUAL ARTS / Key。ゲームサントラ最高位。

401位から450位

　407位 『ススト』菊地雅章。和ジャズの名盤に数え上げられる一枚だがこの順位だった。他に500位圏内に入ってきたジャズは同じく菊池雅章の 『銀界』（山本邦山+菊地雅章）で490位。

451位から500位

　457位 『the book about my idle plot on a vague anxiety』toe。国内外を問わず高い評価を得ているアルバムだが、この順位に。同じく、海外からの評価も集めているライブ盤、 『Mint Jams』（CASIOPEA）が457位。

　498位 『抑圧』行為者。今回500位以内で一番情報の少なかったアーテストのアルバムが本作である。だが82点を獲得したということは少なくても3人以上の人間が投票したことになる。レーベルにも全く所属しないで個人で発表された作品が水面下で評価を集め、このようなランキングで上位に踊りこんでくる未来もそう遠くないのかもしれない。