2023年2月3月のおすすめ旧譜&新譜をお送りしたいと思います。
2月から、SpotifyでJMXR: JMX Radioというポッドキャストを始めてみました。
今のところ10エピソードで一区切りとして更新は止まってしまっていますが、シーズン2ということでまた10エピソードまとまった時間が出来次第やっていきたいと思っています。
『Win This Record』David Lindley
ジャクソン・ブラウンなどのバックの名演などで知られるギタリスト、デヴィッド・リンドレ―のソロ二枚目。ジャクソン・ブラウンが好きということもあって、デヴィッド・リンドレ―のソロ作も何時か聴こうと思ったまま聴かずにいたんだけど、50年代のテイストを模したこの楽しげなアルバムジャケットに魅かれてようやく聴き始めたらこれがめっちゃよかった。半分自作で、半分カバーということもあって曲も粒揃いで一気に聴けるし全く飽きない。レゲエのテイストが濃い前作よりもパワーポップ味が増しててよりバラエティー豊かで楽しい仕上がり。
特徴的なギターソロの美しいトーンが全編通して楽しめるのも醍醐味の一つですが、ギターと違って決して美声ではないけど、独特のザラザラした面白い声質は、聴いてるうちに結構癖になってきます。こういうギターや歌に代替不能の独特のトーンがあって、アレンジに自信があるアーティストは、もっとカバーが沢山入ったアルバムを作って欲しい。奇しくも本作を聴きはじめた直後にデヴィッド・リンドレ―他界のニュースが……。
オススメ曲。「Something’s Got a Hold on Me」「Brother John」「Premature」
『Raven』Kelela
アメリカのR&Bシンガーの五年ぶりニ枚目のアルバム。最近の流行りでもあるアンビエントR&B的な作りで、チルさとダンサブルなビートが同居した心地よい一枚。捨て曲もない。いわゆるアンビエントR&Bよりもビートは2ステップやドラムンベースよりのアクティブなものが多いが、その分歌い方はクールでアンビエント的な雰囲気を壊してないのも特徴。
メロディも結構ドラマチックなのにさっき書いたように歌い方が抑制されてるので、暑苦しくなくスッと聴ける。ただ長く聴いてるとそこが物足りなくなるかもしれないという予感はある。でもこれもほとんどいちゃもんレベルの文句で、僕のTwitterのタイムラインでもかなり話題になっており、音楽オタクみんな絶賛してるみたいな雰囲気があるだけのことはある作品。
おすすめ曲「Contact」「Happy Ending」
「Time Will Tell」Blood Orange
ルカ・グァダニーノが監督したHBOのテレビドラマシリーズ、『We Are Who We Are』を正月ぐらいにずっと見てて、その中でBlood Orangeの曲や本人がフィーチャーされていた。その中でもこの曲はプロモを登場人物が真似するシークエンスがいきなり挿入されてて特に印象的だった。Blood Orangeンジ作曲でSky Ferreiraが歌っている「Everything Is Embarrassing」もそうだけど、80年代のシンセポップ的な音像で、シンプルなんだけど力強くて印象的なメロディーとリリックにぐっと引き込まれる一曲で、とくにサビ部分のCome into my bedroomのリフレインはなんども口ずさんでしまう。
プリンスが「Little Red Corvette」 や「Purple Rain」で見せた熱量と切なさを最も引き継いでいるのはもしかしてBlood Orangeかもしれないとこれを聴いて思った。
『432』Gatzby in a Daze
中国の杭州出身のバンドの2020作。ドリーミーなギターポップが、全編通して展開される、好きな人はたまらない一枚。
中国っぽい要素は良くも悪くもニューエイジでよくありそうなジャケットぐらいで殆どなく、最近のAriel PinkやMen I Trustを彷彿とさせるローファイ感、気だるさを伴った演奏、歌唱がグッとくる。
文化的に開けている台湾、韓国のバンドが欧米的なインディーロックをほぼ遜色なく展開しているならわかるけれど、中国のバンドもここまで来たかとおもった(それが本当にいいことなのか別として)。
オススメ曲は「蒼南夜話」、スティーブ・ハイエットの『渚にて』みたいな「Grey Rain」。
「Smile」Standards
ネット検索で不利になること考えなかったのかふしぎになる無邪気すぎるぐらいシンプルなバンド名のギターとドラムデュオによる、これまた本当に何にも考えてないのかというタイトルの曲。本当はもっと早く紹介するつもりだったけれど、タイトルもバンド名も平凡すぎて忘れてしまい、検索の手がかりもなかったため、また偶然出会うまで、紹介できなかった。
肝心の内容はポップで多幸感溢れるマスロックのインストナンバー。曲として何度も聴いているというよりは、楽しげに演奏する二人とぐるぐる回るカメラワークがツボなPVにドはまりしてなんども見ている。良い。
あたらしさは特にないけれど、非常に2020年代っぽい無邪気さがあると思う。