2023年6、7月のおすすめ新譜&旧譜。
近況:最近、音楽をただ聴くのではなく、何かを言おうとして音楽を聴いていることに気づいて(大分前からそうだったんだけど目をつぶってた)、それでも別に新しい音楽を開拓するモチベーションになってたからいいんだけど、いい加減疲れて、新譜に追われていくのも(もともとそんなに追ってないけど)しんどく、もともと自分は過去のカタログを色々聴くリスニングスタイルで、「今」の音楽には全然フォーカスしてこなかったんだけど、ここ何年かはそんな今までの習慣を変えたいのもあって、割と「今」に時間を割いて、けどいくら聴いても「今」の実像をとらえられている気がせず、シーンが分散化、もしくは存在しないのが2020年代のシーンだ、と言われたらまあそうなんだけど、それでもそれなりに自分の中で実像を結びたいと思っているが、むなしく空振りし続ける日々で、単純に努力が足りないだけなんだけど、そこまでしてやりたいわけでもないのかもしれずも、とにかく取り残されていく自分を感じるだけだったから、暫くはディスクガイドを眺めて何か一つのジャンルを掘ってみたり、偶然であった曲を適当に聴くぐらいの感じでいきたいが、買ったCDを聴かなければいけない、という強迫観念に取りつかれてた時期に近いものを最近サブスクにも感じるようになってきたので、そのうちサブスクも辞めるかもしれないんだけど、レコードにはまっている人が「レコードは、手に入れたいけど手に入らない、がまだ残っているから良い」といっていて、その気持ちもなんとなく分かるようになってきたから、レコード集めをそのうち始めるかもしれないけどまずはプレイヤーからだなと思うとなかなか手がでない。
『Bee and The Whales』Galileo Galilei
再結成復帰一作目。尾崎兄弟にオリジナルメンバーの一人でセカンドアルバムの後で脱退した岩井郁人も復活。ガリレオ・ガリレイは本当に大好きなバンドで、好きになったとたんに解散したから、リアルタイムで彼らの新しい音源に出会えたのは本当に嬉しかった。けれどもすでにガリレオガリレイのメンバーが始めたBBHFが好き、というかBBHFの音楽の方が好みになっていたから複雑。本作でも結局BBHFに一番テイストの近い「ピーターへ愛を込めて」が一番好き。それにしてもBBHFのアルバム『南下する青年』は大傑作だったな。
『True Life』TOMC
日本のビートメイカー、DJ、プロデューサーの5月リリースの最新作。Nujabesや、先日亡くなった坂本龍一の音楽同様、都市生活の中でふとした瞬間に感じる郷愁、どうにも出来ない漠然とした悲しみみたいなものを癒してくれるレコード。アンビエント的な癒しやチルは勿論あるけど、同時に繰り返えされるメロディから力強さと「熱」を感じる。それが最大の魅力かもしれない。実はTwitterでつながってる人なんだけど、もう話しかけることも出来ないぐらい遠くに行ってしまった。働きながらも音楽を作り続けて、ここまでの境地に達することができるので、ということで本人もおっしゃっていたが、社会人やりながら音楽やっている人は、是非辞めないで自分のペースで仕事を並行して音楽活動を続けてほしい。
『e o』cero
こちらも5月リリース。今年の新譜の中でも特にSNSを沸かせた一枚。というか「Fdf」や「Nemesis」なんかもう何年も前から出ている曲で、出たときから凄いと思っていたので今更驚いてるのかという意地悪な感想が頭をよぎった。というわけでその二曲がとってもグルーヴィーだったから、全体としてリズムよりも和声に重点を置いたような作りになっていて、びっくりした。和音も今までの作品より凝っているとおもう。まあコードまで分析してないから完全に印象なんだけど。
聴くたびによくなってきて今年リリースの作品では一番聴いてる。
『L’Etat Et Moi』Blumfeld
ドイツのロックバンドのセカンドアルバム。ぱっと聴いた印象で2000年代のバンドっぽいなと思ったら1994年発表だったからびっくりした。なんか熱量とクールさのバランスが90年代前半のロックじゃなくて完全に2000年代のそれだったから。Pavementよりは突き放した感じはしないんだけど、Pavement同様2000年代を先取りしているような感じがある。Death Cab for Cutieっぽい1曲目、パンキッシュな2曲目「Jet Set」、フォークロック調の「Walkie, Talkie」、マスロック/ポストロック的な「Verstäker」がオススメだが、基本全部良い。なんだかんだで日本で有名なクラウトロックのバンドとか、電子音楽系とか、ドイツのアーティストって英語で歌ってたり、曲名も英語だったりすることも多いので、久々にドイツ語で歌われた曲をまともに聴いた気がしてそれも新鮮だった。しかもドイツ語のちょっとカタい様な語感の気持ち良さがサウンドとマッチしていてこれがまた気持ちが良い。いやこれ名盤ですよ。
ちなみに本作、ジャケットがエルヴィス・プレスリーのパロディのクソジャケだったから聴いてみたわけだが、普通の人は(パロディと知っていようがなかろうが)真面目に聴こうとしないと思うので、やっぱりジャケットで損してると思う。勿体ない。ジャケはクソだけど中身は名盤みたいなお題があったらこれを例に挙げようと思う。
『Stratosphere』Duster
アメリカのスロウコアバンドの1998年発表のデビューアルバム。Duster、名前すら全然しらなかったが、Spotifyだけで月間400万人のリスナーを獲得しているので結構名のしれてるバンドなんだろう。90年代を代表するインディーバンドで、日本でも人気なPavementが146万人なので400万リスナーは結構凄い※。こういうバンドがまだまだいるから定番はもう聴いてるから積極的に開発していかなくても良いかなっと思ってるロックでも、昔のアーティストもきちんと掘っていかなきゃなと思ったりする。肝心の音楽性なんだけど、ゆったりとしたダウナーなビートにちょっとけだるくてそれでいて一息つかせないひねりみたいなものも効いてて、テンション低めなんだけどエモーショナル。そんな感じ(どんな感じだ)。ま、スロウコアですよ。これも90年代っぽくない。Pavement的な雰囲気もあるけど、このけだるさを前面に押し出しつつもエモさを感じるのは完全に2000年代のトーン&マナーな気がする。強いていうなら録音がもこもこしててLo-Fiなのが90年代感あるか。でも2018年のアルバムですっていったら全然信じられる普遍的インディー感はある。ごちゃごちゃ書いたけど疲れ切った現代人にオススメ。CD欲しいけど売ってない。レコードは手に入るのに。ああああああ。
※とおもったら「Constellations」という曲がTikTokのトレンドにフィットして良く使われているらしい。恐るべし、TikTok。
「雀の子」Grapevine
しれっとライブ等で復活してたから忘れていたけれども、例の事件からの謹慎、復帰後の初の楽曲。で、そのこともネタにしつつ、相変わらずの言葉遊びと、前作の「ネズミ浄土」よろしく日本の古典(小林一茶の俳句)を取り込んだ歌詞になっている。曲調は、むき出しのプリミティブなむき出しの電子音に打ち込みのビート、それにバンドサウンドが絡んだバイン流R&B/テクノ/ロックのミクスチャーサウンド。前作の流れに『Burning Tree』の時の打ち込み、実験的手法が合流したような作風になっている。9月のアルバムもなんとなくそうなりそう。この曲のクレジットは田中和将単独になっており、そこも前作に重なるし、事件のこともあるので9月のアルバムは田中曲が中心のアルバムになりそうな予感。