ヒップホップ
80年代は70年代からアンダーグラウンドで脈々と続いていたヒップホップが、初めてヒットチャートに本格的に進出し始めたヒップホップ黎明期でもありました。
というわけでヒップホップにとって歴史的に重要な作品が発表されはじめた10年だったんですけど、一体どのアルバムがランクインしたのか改めて見てみましょう。
19位 | 『It Takes a Nation of Millions to Hold Us Back』Public Enemy 1988年 | 460点 |
31位 | 『3 Feet High And Rising』De La Soul 1989年 | 319点 |
55位 | 『Straight Outta Compton』N.W.A. 1988年 | 244点 |
62位 | 『Licensed to Ill』Beastie Boys 1986年 | 212点 |
ランクインしたのはたったの4枚だけでしたね。
とまあ少ないといえば少ないのですが、この時代は、今のヒップホップに比べると聴きやすくはないですし、歴史的重要性はもちろん高いんですけど、現行のシーンとのつながりで語りにくい部分もあります。
今活躍しているラッパーがこの時代のヒップホップを参照しているかといわれたら意外とそうでもなく、ラップ黄金期である90年代のレジェンドすら聴いたことないと公言する若いラッパーもいるぐらいです。
この四枚はもちろんヒップホップ史を語る上では外せないアルバムですのでランクインは妥当だと思いますが、こういうなかなか昔のクラシックアルバムが聴かれにくい状況、加えてUKロックが強いランキングでよくランクインしたなというのが正直な感想です。
そもそもこの時代のヒップホップアーティスト達がアルバムをどれだけ一つのアートフォームとしてとらえていたか、という議論も必要な気がします。
その上で欲を言えばこれもランクインしてほしかったなというHip Hopの歴史的名盤を挙げておきますね。
ランクインしなかった80年代ヒップホップの名盤
『Paid In Full』Eric B. & Rakim 1987年
歴代のラッパーで誰が最も偉大か? みたいな議論はよくありますけど、そういう話題には必ず上がってくるラッパーがRakimです。本作はそのRakimがDJのEric Bと組んで発表したファーストアルバム。
ラップの一種の芸術まで高めたそのフロウはのちのラッパーに多大なる影響を与えてきました。これはアメリカの80年代のランキングなら絶対欠かせない一枚といえます。
『Criminal Minded』Boogie Down Productions 1987年
KRSワンが在籍していたことでも有名なヒップホップグループのデビュー作。レゲエの一ジャンルであるラガマフィンをヒップホップに取り込んだことで有名。
『Strictly Business』EPMD 1988年
ニューヨーク、ロングアイランド出身の、エリック・サーモンとパリッシュ・スミスによるヒップホップユニットの名盤ファースト。エリック・クラプトンなどをサンプリングした割とキャッチーなトラックなので、ロックファンとかにも聴きやすい一枚かと思います。
『Raising Hell』Run-D.M.C. 1986年
Aerosmithとの共演で大ヒットした「Walk This Way」を含む彼らの代表作。ヒップホップで最初に100万枚以上を売り上げたレコードとなった。
『The Great Adventures of Slick Rick』Slick Rick 1988年
圧倒的なストーリーテリングとキャラ付けで、ラップに新しい展開をもたらした一枚で、ヒップホップランキングには欠かせない名盤です。
ヘヴィータル/ハードロック(HM/HR)
80年代はメタルというジャンルが商業的に最も成功した10年でもあるんですよね。
またメタルの中でも、スラッシュメタル、ブラックメタル、デスメタル、グラインドコア…など、多くのサブジャンルが生まれたディケイドでもありました。
ということでメタル、それからハードロックも併せて何枚ランクインしたのか見ていきます。
11位 | 『Appetite for Destruction』Guns N’ Roses 1987年 | 611点 |
42位 | 『Back in Black』AC/DC 1980年 | 294点 |
86位 | 『BLUE BLOOD』X 1989年 | 160点 |
90位 | 『Master of Puppets』Metallica 1986年 | 154点 |
98位 | 『Bleach』Nirvana 1989年 | 138点 |
ということで、ランクインしたのはこれだけでした…。
この中で純粋にメタルと言い切れるのは86位のX『BLUE BLOOD』と90位のMetallica 『Master of Puppets』ぐらいなんですよね。
これはかなり少ないといっていいんじゃないでしょうか。
89位のNirvanaのデビューアルバム『Bleach』もかなりメタル色が濃いアルバムなので、メタルとカウントしてもいいと思いますけど、それにしても3枚です。
80年代は当時からロックが衰退したとか言われてましたけど、ハードロックといえるようなものも、11位のGuns N’ Roses『Appetite for Destruction』と42位のAC/DC『Back in Black』ぐらいですね。
ハードロックの場合はそもそもメタルと違って80年代に出た名盤の母体数がそもそも少ないので妥当といえば妥当なんですけれども、それにしてもメタルは少なかったです。
これは募集をかけたTwitterの僕のクラスターがメタルにあんまり入れ込んでいない人が多いというのもあるかと思います。
ランクインしなかったハードロック、ヘヴィメタルの名盤
『Blizzard Of Ozz』Ozzy Osbourne 1980年
故ランディ・ローズをギタリストに迎えた、元祖メタルバンドともいえるBlack Sabbathの初代ボーカリスト、オジー・オズボーンが80年に発表した名盤ソロファースト。ランディの多彩なギタープレイやキャッチーな楽曲群はある意味80年代のHR/HMの青写真だった気もします。
『1984』Van Halen 1984年
シンセサウンドを大胆に導入して大ヒットした一枚。そんな変化の結果、デヴィッド・リー・ロスが脱退することに。
『The Number of the Beast』Iron Maiden 1982年
『Screaming for Vengeance』Judas Priest 1982年
80年代のメタルを代表するバンドを一つ選べ、いやメタルを代表するバンドを選べと言われたら Iron Maidenと Judas Priestは必ずあがるのではないでしょうか。
しかしながら今回はランク外でした…。彼らも名盤多いので票が割れてしまったのもあるかと思います。
『Spreading the Disease』Anthrax 1985年
『Reign In Blood』Slayer 1986年
メタルという音楽がかなり商業的になってきて、聴きやすいものを増えてくるなかで、その反動としてエクストリームな表現を追求するという動きも出てきました。それがMetallica、 Slayer 、Megadeth、 Anthrax などを中心とするヘビーメタルにハードコア的な激しさをもちこんだスラッシュメタルというジャンルでした。ところが今回ランクインしたのはMetallicaの『Master of Puppets』 一枚だけでしたね。Megadethは全盛期は90年代の初頭ともいえるので仕方がないとして、 あらゆるラウドミュージックの頂点に君臨するようなSlayerの『Reign In Blood』 はランクインしてほしかったですね。
『Ace of Spades』Motörhead 1980年
そしてそんなハードコアやスラッシュメタルにその激しいサウンドで大きな影響をもたらしたのが Motörhead です。 表題曲で超名曲の「Ace of Spades」を含む本作は必聴です。
『Hysteria』Def Leppard 1987年
『Slippery When Wet』Bon Jovi 1986年
HR/HMで80年代に最も成功した二組のグループが Def Leppard と Bon Jovi でしたが、彼らの代表作2枚もランク外でしたね。
『Dr. Feelgood』Mötley Crüe 1989年
スタジアム・ロックをけん引したグラムメタルバンドの代表作。ヘビィーかつキャッチーなサウンドの聴きやすい一枚。
さて、次のページでは惜しくも100位以内にははいらなかったアルバム101位から200位までのアルバムを紹介したいと思います。