なぜ今80年代アルバムベストなのか?
今回は80年代に発表されたアルバムの中で、個人的にこれは凄いと思うものを30枚選んでランキングをつけるという、80年代アルバムベスト30です。
2010年代は80年代リヴァイバルのディケイドでもあって、80’sのテイストのアートワークや、ファッションが流行りましたし、音楽でもシンセポップを中心として、80年代のテイストを取り入れた音楽がチャートをにぎわせていました。
ということで、2010年代を通過した今の自分の感覚で、80年代の音楽をアルバム単位で振り返ってみて評価してみたら面白いんじゃないか、と思い立ち今回の企画に至った次第です。
実は去年の年末からコツコツ準備していたんですよね。範囲は10年だけだし、長くても3か月ぐらいで終わるかなと思っていたんですけど、なんだかんだで半年近くかかってしまいました。
まずは選考の基準を説明しておきたいと思います。
- 80年1月1日から89年12月31日までの間に初めて発表されたアルバムであること
- 1アーティストにつき、1枚のみランクイン可
たまに80年代アルバムベスト企画でクラッシュの『ロンドン・コーリング』が入っていることがありますが、アメリカでは80年代かもしれませんが、あれはイギリスでの発売は79年ですので、そういうところは気を付けて選びました。
また、なるべく多くのアーティストを登場させたいと思ったので、やや厳しい縛りですが、1アーティストにつき、1枚のみランクイン可としました。下手したら名盤を連発して発表していたプリンスやブルース・スプリングスティーン、僕の大好きなXTCだらけのランキングになってしまうかと思ったので。
枚数ですが、30枚以下だと、ランキングとして眺めるにはちょっと少なすぎるというのと、30枚以上だと、アルバム全体が良いと思えるアルバムを探すのが大変になってしまうという理由から30枚に設定しました。
ただ個人的にはちょっと多すぎたかなと思いました。半分の15枚ぐらいでもよかったですね。
さて、前置きはここら辺にしておいて早速30枚紹介していきたいと思います。
30位『サイコキャンディ』ジーザス&メリーチェイン Psychocandy The Jesus and Mary Chain 1985年
ジムとウィリアムのリード兄弟を中心としてスコットランドで結成されたバンドのデビューアルバム。
シンプルだけどキャッチーなメロディーを単調なドラムと爆音のノイズギターで包んだ今までになかった音楽性は、のちのシューゲイザーの青写真といえるような革命的なサウンドでした。
うっとりするようなメロディーと轟音ギターのかけあわせが癖になる1枚です。
プライマル・スクリームでボーカルを担当するボビー・ギレスピーがドラムを叩いていることでも有名。
29位『セブン・ウェイブス』スザンヌ・シアニ Seven Waves Suzanne Ciani 1982年
テレビや映画の効果音やBGMのコンポーザーとして70年代から活躍していたシンセサイザー奏者のデビューアルバム。
全編インストで、その名の通り波の音を意識したような、曇りの日のちょっともの悲しく海沿いの情景が思い浮かぶような作品群になっています。
ニューエイジやアンビエント、Vaporwaveの源流として、など、様々な文脈から近年再評価の著しい一枚。
アマゾンのレビューで音が古臭いって書かれてたんですけど、確かに時代を感じる古さみたいなものはあるんですけど、それすらもノスタルジーに聴こえてしまう幻想的で儚さを感じさせる美しい作品だと僕は思います。
28位『マーマー』R.E.M. Murmur R.E.M. 1983年
米ジョージア出身のオルタナティブロックバンドのデビュー作。
R.E.M.のどのアルバムよりもシンプルで、それでいて奥深い演奏がとにかく魅力的ですね。
最低限のアレンジできっちりポップにまとめあげる手腕はさすがですし、ロックバンドの新しいあり方を示したという意味でも後陣への影響はかなり大きいと思います。
最初は飾り気の少ないサウンドに物足りなさを感じるかもしれませんがじわじわと好きになってくるスルメアルバムかと。
27位『スタンズ・フォー・デシベルズ』The dB’s Stands for Decibels The dB’s 1981年
ニューヨーク出身のパワーポップバンド、The dB’s (デシベルズ)のデビューアルバム。パワーポップ、ジャングルポップの知る人ぞ知る名盤。
古くはビートルズの1st、2ndから、RaspberriesやBig Star、Cheap Trick、The Replacements、初期XTC、WeezerやJimmy Eat Worldに繋がるパワーポップの系譜の一端を担う一枚。
キャッチーでわかりやすいポップなナンバーから、割と実験的でひねくれたギターポップまで、色々楽しめる一枚です。
とにかく一曲目の「Black and white」が素晴らし過ぎて、筆者も一目惚れしたので、それだけでも聴いて欲しいですね。
26位『スティーヴ・マックイーン 』プリファブ・スプラウト Steve McQueen Prefab Sprout 1985年
80年代を代表するソングライターの1人、パディ・マクアルーン率いるプリファブ・スプラウトの最高傑作の誉高い2ndアルバム。
パディの卓越したソングライティングと若さ故のバンドの情熱が混ざり合ったような、二度とは訪れることのない青春のようなレコード。
そのジャケットのようにくすんだ淡い青色のような透き通っているがどこか影があって美しい楽曲群に胸を打たれる一枚です。
25位『アヴァロン』ロキシー・ミュージック Avalon Roxy Music 1982年
70年代から音楽性を変化させつづけてきた、イギリス出身のロックバンド、ロキシー・ミュージックのラストアルバム。
彼らの主な活動時期は70年代で、グラムロックに分類される、騒がしくて、キッチュな怪しいロックンロールをやってました。が、一度活動を休止してメンバーも減ったところで、本作の様な落ち着いた音楽性に変わったんですね。
70年代の頃はどちらかと言うと楽器はガチャガチャと演奏し、曲の構成もコロコロプログレみたいに変化していました。しかし本作は楽器の演奏はなるべくシンプルに、曲も反復するリズムの気持ちよさを重視したダンサブルでシンプルなものに変化しています。歌詞の言葉数も少なくなり、より抽象的で禅問答のようなミニマムで深い詩世界を展開してます。
タイトルナンバーの「Avalon」と一曲目の「More Than This」はそういった彼らの新しいスタイルを代表する素晴らしいナンバーで必聴の二曲です。
24位『オレンジズ・アンド・レモンズ』XTC Oranges & Lemons XTC 1989年
英スウィンドン出身のロックバンドの9枚目。従来のちょっとひねくれたギターポップ味を抑えてよりポップでキャッチーに仕上げた一枚。
XTCはかなり夢中になったバンドだし、駄作がほとんどないバンドなのでどの一枚にするかはかなり悩みましたが、ここ2、3年の自分の好みでいうとこの一枚ですね。アメリカ市場でのウケを狙って作られた事もあってポップ職人としての彼らの最良の部分がストレートに出た一作で名曲のオンパレードです。もちろん彼ららしい歌詞の毒っけ、シニカルなユーモアも健在です。
彼らのキャリアの中では一番クセが無くてとっつき易い一枚ですので、XTC入門としても最適だと思います。
23位『アペタイト・フォー・ディストラクション』ガンズ・アンド・ローゼズ Appetite For Destruction Guns N’ Roses 1987年
ヘアメタルや軟弱なポップメタルバンドを蹴散らしたLAベースのロックバンドの衝撃的デビュー作。ハードロックが持つブルージーな要素や楽曲のバリエーションとパンクの急性さの良いところが合体した様なある種ロックの理想的と言えるサウンドは今でもスリリングかと。中でも一曲目とラストは圧巻。
22位『ポールズ・ブティック』ビースティー・ボーイズ Paul’s Boutique Beastie Boys 1989年
元はハードコアバンドだった3人組ヒップホップグループのセカンドアルバム。
メタル、ハードロックがサンプリングの中心だった前作からサンプリングの振り幅を大きくした多彩なサウンドを展開する飛躍の一枚。
楽しげな彼らのラップも勿論ですが、とにかく本作の魅力は、粋を尽くした、サンプリング芸術とでも言えるような完成度の高いトラックですね。特にとにかく気持ちいいドラムを詰め込んだ「Shake Your Rump」は名曲。
プロデューサーはダスト・ブラザーズ。
21位『ラヴ』アズテック・カメラ Love Aztec Camera 1987年
ロディ・フレイムを中心とする、スコットランド出身のギターロックバンドの3枚目。
日本の渋谷系などにも絶大な影響を与えたネオ・アコースティックを象徴するバンド。
同時代のファンクや、ソウルから影響を受けたリズムに、パンク・ニューウェーブの勢いを乗せてさわやかなアコースティックサウンドを展開してみせたのが彼らの持ち味でしたが、このアルバムでは彼らのルーツである、ソウルやR&Bの要素を強め、80sらしい柔らかなシンセサウンドと得意とするギターワークで味付けし、ポップに聴かせた激甘なソフィスティ・ポップアルバムに仕上げています。
とにかくそのジャケットのような柔らかくて晴れた日の休日の昼下がりのような暖かさを持ったアルバムです。