前回に引き続き80年代特集ということで、今回は80年代でとくにこれは優れている、グッとくるという曲を集めて順位をつけていくという80年代ソングベスト30をお送りしたいと思います。
なぜ曲ランキングをやるのか?
前回はアルバムランキングでしたが、曲はめちゃくちゃ好きなのにアルバム単位となるとどうも…という曲が結構あったんですよね。
それから、80’sといえばやはりきらびやかなポップソングがチャートをにぎわせたディケイドだったので、そういう物もちゃんと取りこぼしなく評価したい、ということで曲ランキングをやります。
この曲ランキングとアルバムランキングで、80年代を当サイトがどのようにとらえているのかわかっていただけるかと思います。
選考基準
前回同様、選考の基準を説明しておきたいと思います。
- 80年1月1日から89年12月31日までの間に初めて発表された曲であること
- 1アーティストにつき、1曲のみランクイン可
一応80年代ベストという事で、「80年1月1日から89年12月31日までの間に初めて発表された曲」という事を条件にしました。
つまりアルバムからシングルカットされた曲なら、アルバムが出た年月日が初出、シングルが先に出た後でアルバムに収録された曲なら、シングル発売日を初出として扱います。
例えばパブリック・エネミーの「ファイト・ザ・パワー」は『FEAR OF A BLACK PLANET』(1990年) に収録されているんですけど、シングルとして発表されたのは1989年なんですね。
この場合、この曲はランクイン可となります。
それからアルバムに引き続き、曲単位でも1アーティストにつき、1曲のみランクイン可としました。
やや厳しいですが、ランキングの多様性を重視してこうしました。
また、アルバムランキングで取り上げたアルバムに入っているものに関しては少し優先度を下げました。
それからアルバムもそうだったんですけど、今回は邦楽に関しては除外しました。
後々邦楽曲ベスト200とかやろうと思ってて、その時に絞り込めばいいかなと…。一年前からやるっていってて全然進んでないんですけどね。
話がそれましたが、早速30位から発表していきたいと思います。
30位「キャント・ハードリー・ウェイト」リプレイスメンツ “Can’t Hardly Wait” The Replacements 1987年
米ミネアポリス出身のバンドの5枚目のアルバム『プリーズド・トゥ・ミート・ミー』(Pleased to Meet Me)収録の名曲。ツアーのなかで、早く家に帰りたいという内容。
遠くで自分を待ってくれる人、帰るべき場所に思いを馳せつつ、旅の中で目にしたことを感じたことが羅列されていて、それはまるで人生を旅になぞらえた比喩のようにも感じられて感動的だったりします。
AメロとBメロが繰り返されて最後にしかサビが出てこない構成や、ところどころにあるブレイク、ボーカルのポール・ウェスターバーグの絞り出すような歌唱が最高です。彼らにしては珍しいホーンセクションの起用も、この曲ではバッチリハマっています。
この曲は個人的に思い入れが強く、回数でいえばこの30曲で間違いなくトップ3に入るぐらいは聴いてて、もっと順位が上かとおもいましたけど、80年代の曲という尺度で他の曲と比べてみると意外と低い順位になってしました。こういう発見も面白いので皆さんも是非自分のベストやってみましょう(笑)。
29位「テイク・オン・ミー」a-ha “Take On Me” a-ha 1985年
打ち込みの力強いドラムサウンド、少し不穏なんだけどキャッチーなシンセサウンド、パラパラの語源になった謎の掛け声。イントロからがっちりリスナーのハートをつかんでくる80年代を代表するポップソング。
低音から高音まで段々あがっていく開放感のあるサビも気持ちいいですし、本当によくできている曲だと思います。
漫画のなかの人物との恋愛を描いた、アニメーションと実写を上手くかけ合わせたプロモーションビデオも名作で、現時点でYouTube12億回再生を突破していますね。
28位「ドント・ゲット・ミー・ローング」プリテンダーズ “Don’t Get Me Wrong” The Pretenders 1986年
ニュー・ミュージカル・エクスプレス(NME)の記者だったクリッシー・ハインドを中心に結成されたバンドのヒット曲。
この曲もなんなら葬式で流してほしいと思っているぐらい愛おしい曲なんですけど、並べて比べてみるとこの順位になってしまいました。
シャッフルのうきうきするような軽快なリズム、合間に入ってくるギターとシンセがとても爽やかで心地よい曲です。
好きな人の前だと上手く振舞えない、けど誤解しないで(Don’t Get Me Wrong)、というラブコメのヒロインみたいな歌詞がいいです。
この曲を聴くとキュンと胸がいっぱいになります。名曲。
27位「ワンス・イン・ア・ライフタイム」トーキング・ヘッズ “Once In A Lifetime” Talking Heads 1980年
アフリカ音楽のリズムを大胆に取り入れ作り上げられた傑作、『リメイン・イン・ライト』収録の名曲。
あまり語られることがないですがトーキング・ヘッズは実は歌詞が凄いと思っていて、得体の知れない大きな力で知らないうちに今の境遇になっていたけどこんなんでいいのか、という中年の危機を描いた曲。
こういう我々の日常を脅かしてくるようなポップソングっていいですよね。
トーキング・ヘッズは最初「ラブソングは書かない」って決めてて、面白いテーマの曲が多いので、歌詞をみるだけでも結構面白いし、ラブソング以外の歌詞を書きたいなっておもっている人は参考になるかもしれないです。
26位「スペルバウンド」スージー&ザ・バンシーズ ”Spellbound” Siouxsie And The Banshees 1981年
ウィークエンドにサンプリングされた「ハッピー・ハウス」と迷いましたが、パンク/ゴス/ニューウェイヴの名曲群の中でも頭ひとつ抜け出たかっこよさがあるこの曲で。
不穏なギターのイントロ、疾走感のある導入部、展開が実にスリリングですよね。
プロモーションビデオもかっこ良くて一時期ハマって何度も見ていましたね。数あるポストパンク、ニューウェーブバンドの中でも、スージー&ザ・バンシーズは本当にいいプレイヤーに恵まれたバンドだと思います。
25位「フォトグラフ」デフ・レパード “Photograph” Def Leppard 1983年
ロックとブルースの違いの一つとして、手に入らないものへの渇望を、ロマンティックに歌うか(ロック)、非常に情けなく歌うか(ブルース)、があると勝手に思ってるんですけど、この曲は亡くなってしまったハリウッド女優マリリン・モンローへの想いをロマンティックに歌い上げたロックバラードになっています。
「マリリン・モンロー大好きだけど、もう写真でしか会えない、写真なんかいらねーよ」っていう歌詞で、まぁ冷静に考えると非常に情けないですよね(笑)。
それを彼らのお得意のきらびやかなギターワークとドラマティックな曲展開、エモーショナルな歌唱でなかなかロマンティックに描いている傑作です。
デフ・レパードはアルバム単位ではあんまり聴かないんですけど、曲単位だとかなりお世話になっていますね。個人的にはデフ・レパードはHR/HMバンドというよりは、優れたパワーポップバンドとして聴いてます。
24位「アスベストス・リード・アスベストス」ワールド・ドミネーション・エンタープライゼズ ”Asbestos Lead Asbestos” World Domination Enterprises 1985年
LLクールJの曲のカバーでも知られるロンドン出身のポストパンクバンドのデビュー曲。
この曲はミート・ビート・マニフェストのカバーのほうが有名だったりするんですけど、原曲の破壊力には適わないかなと思ってます。まあ方向性が違うんですけど。
80sはスティーヴ・アルビニとかソニック・ユース、マイブラやジザメリ、ダイナソーJr.など、過激な歪みを売りにしたギターバンドが沢山出てきて、ワールド・ドミネーション・エンタープライゼズは彼らみたいなシーンへのインパクトや影響力は皆無だったものの、サウンドのぶっ壊れた方だけで言えばこの曲はダントツなので好きですね。この過剰な歪のギターサウンド、一体どうやって作ってるんですかね。
23位「タイム・アフター・タイム」シンディ・ローパー “Time After Time” Cyndi Lauper 1983年
マイルス・デイヴィスもカバーした最早スタンダードソングな80年代ポップバラードの傑作。
曲そのものもいいですが、やはりシンディのエモーショナルで表情豊かな歌唱に心が打たれます。サビの男性パートのハモリもいいです。
ストーリー仕立てのプロモーションビデオも涙なしには見れない傑作です。
似たようなアレンジのヒット曲でキム・カーンズの「ベティ・デイビスの瞳」という曲もありますので、この曲が好きな方はそれもおすすめです(正直今回のランキングで入れるかかなり迷いました)。
この曲はオリジナルですが、シンディと彼女のプロダクションチームはカバーが非常に上手いんですよね。デビューアルバムの約半分がカバー曲なんですけど、ほぼすべての曲で原曲越えといえるような素晴らしいアレンジ、歌唱を見せています。
この後シンディはマーヴィン・ゲイの傑作「ワッツ・ゴーイン・オン」もカバーするんですけど、さすがに原曲越えとまではいかないものの同じぐらい感動的な作品に仕上がっていますので、よろしければそちらもチェックしてみてください。
22位「レディオ・フリー・ヨーロッパ」R.E.M. “Radio Free Europe” R.E.M. 1981年
アメリカを代表するロックバンド、R.E.M.のデビューソング。デビュー曲なのに抜群の完成度を持つ曲で、個人的には完璧な曲の一つだと思ってます。
シンプルなんだけど、各パートにそれぞれ存在感があって、バンドらしいノリが炸裂したポップソングというか、計算してもなかなか作れないような絶妙なバランスというか、見事なまでの引き算の美学というか、そういうものを感じさせる、今までありそうでなかった不思議な曲だと思うんですけどどうでしょうか。
この後デビューアルバムの前にEPを一枚だすんですけど、そちらはもうちょっとぎこちなさとか、初々しさがあって、この曲のこの完成度って本当に奇跡的なものだったんだなと思います。
面白いのがそのあと発表したファーストアルバムではこの曲の完成度に近づいた作風になっていて、この曲がまったく浮いてないんですよね。
21位「ボーイズ・オブ・サマー」ドン・ヘンリー “The Boys of Summer” Don Henley 1984年
元イーグルスのボーカル兼ドラマーのソロ時代のヒット曲。
ドン・ヘンリーってやっぱり声が良いですよね。彼の声の特性を最大限に活かすような、気持ちいい所が出るようなメロディラインが魅力的な一曲。
イーグルス時代にカントリーをベースにした、アーシーな、土の香りがするようなロックからキャリアをスタートさせたんですけど、このような打ち込みとシンセのサウンドにもドン・ヘンリーのボーカルはかなりマッチしていて、最初聴いたときはびっくりしました。
別れてしまった恋人を未練たらしく思い出す曲で、特に印象に残っている彼女の仕草だとか、美化された思い出がフラッシュバックしてくる様子と現在の夏の終わりの誰もいない風景との対比が鮮やかで胸をかきむしってくるような曲です。
この曲も「フォトグラフ」同様、手に入らないものへの渇望を、ロマンティックに、センチメンタルに歌い上げた名曲