20位「思い出のサニービート」アズテック・カメラ “Oblivious” Aztec Camera 1983年
アズテック・カメラは一枚のアルバムに何曲か必殺の名曲が入っており、そのうちの一曲は本当に完璧なポップソングと形容したくなるぐらい良いので、その中から一曲だけえらぶというのも酷な話なんですけど、やはりこれですかね。
ウキウキする様なイントロ、それを裏切る様な青春の迷いや憂いを表現したマイナートーンのAメロ、ワクワクする様なサビ、ブリッジ部分から怒涛のアコースティックギターによる青春のほとばしりを表現した様なギターソロ。何度聴いてもそのみずみずしさが色あせない、ポップソングに求める全てがギュッと詰まった大名曲。
19位「見つめていたい」ポリス ”Every Breath You Take” The Police 1983年
レゲエとパンクを組み合わせた音楽性で一世を風靡したポリスの最大のヒット曲。
GAO「サヨナラ」大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる」など、多数の模倣者をうみ、日本のポップ史にも多大な影響を及ぼした名曲。
とにかくミュートされたアルペジオのギターフレーズのクリーントーンに、コンプをかけてディレイなどをまぶしたクリスプで心地よいギターリフがこの曲最大の発明ですね。それにスタッカート気味のベースと一定のリズムで叩かれるスネアドラムが織りなすリズムの気持ちよさがとにかくたまらないです。
このギターフレーズはクラシックの作曲家、バルトークの影響を受けて作れらたフレーズらしいです。しかし、バルトークというよりはどちらかというとスティーヴ・ライヒや、ジョン・ケージなどのミニマルミュージックの影響を受けていそうですよね。
YMOもミニマルから影響を受けて作られた「体操」(1981年)という曲があって反復するアルペジオ的なフレーズが特徴的な曲です。くるりの「ばらの花」にも似たようなテイストを感じます。
18位「アイ・イン・ザ・スカイ」アラン・パーソンズ・プロジェクト “Eye in the Sky” The Alan Parsons Project 1982年
ビートルズのレコーディングエンジニアも務めたアラン・パーソンズのソロプロジェクトのヒット曲のひとつ。
経歴を活かした、派手さは無くて、ちょっと陰があるんだけど、さわやかで今でも通用するような細かい所まで気持ちの良いサウンドメイキングが聴き物で、同名のアルバムは1983年のグラミー賞のベスト・エンジニアド・アルバムに選出されました。
何度も裏切られた恋人への最後通達といった内容の歌詞なんですけど、サビで自分は空に浮かんでる目(Eye in the Sky)みたいなもので、君の考えてることは何でも手に取るようにわかるんだ、というような内容でちょっと怖いです(笑)。ホール&オーツの「プライベート・アイズ」とか、ポリスの「見つめていたい」と言ったエイティーズ監視系ソングの一つ。
この空から見てる的なモチーフは近未来の監視社会を描いたジョージ・オーウェルの『1984年』が念頭にあったのかもしれません。この曲のプロモでもそのイメージが引用されています。
17位「サム・ライク・イット・ホット」パワー・ステーション “Some Like It Hot” The Power Station 1985年
デュラン・デュランのアンディ・テイラー (ギター)とジョン・テイラー(ベース)、シックのトニー・トンプソン(ドラム)、それにロバート・パーマー(ボーカル)で結成されたスーパーバンド、パワー・ステーションのヒット曲。
バンド名は同名のレコーディングスタジオからとられ、そのスタジオの特性を活かしたパワフルなドラムサウンドが主役の曲で、イントロから度肝ぬかれます。こんなポップソングほかにないですよね。
80年代はマーヴィン・ゲイの「セクシャル・ヒーリング」を皮切りに、打ち込みのドラムサウンドが幅を利かせ始めた時代なんですけど、それに張り合うようなパワフルなドラミングです。XTCやピーター・ゲイブリエルの80年代初頭のアルバムでゲート・リバーブを使用したパワフルなドラムサウンドが鳴らされていましたが、そういう新たなドラムサウンドが求められ始めた時代でもあったのかもしれません。
勿論ドラムだけじゃなくて、他のメンバーの演奏もよく、特にデュラン・デュランでのハードロックよりの演奏ができない鬱憤を晴らすように弾きまくってるアンディのギターソロが良いです。
16位「ネバー・アズ・グッド・アズ・ザ・ファースト・タイム」シャーデー “Never As Good As The First Time” Sade 1986年
ジャズやソウルをベースにした上質な質感のあるポップソングで一世を風靡し、近年再評価も著しいバンド、シャーデーのヒット曲。
ハッピーなバイブスや高級感のあるサウンドメイキングも勿論シャーデーの魅力なんですけど、「スムース・オペレーター」とか、この曲とか不穏で緊張感がただよう曲もシャーデーの魅力だと思います。
アルバムヴァージョンよりもコンパクトで強力なシングルバージョンを。
ボーカル、シャーデー・アデュの圧倒的なスター性が垣間見れるプロモーションビデオも必見です。
15位「ドント・ドリーム・イッツ・オーヴァー」クラウデッド・ハウス ”Don’t Dream It’s Over” Crowded House 1986年
オーストラリア出身のバンド、クラウデッド・ハウスの全米2位のヒット曲。ソングライターのニール・フィンはニュージーランド出身で、オセアニア地域では絶大な人気のある曲です。
鋭いメッセージ性と考え抜かれた曲構成、アレンジの気持ちよさが際立つ、名曲の名演だと思います。
特にイントロがすばらしく、コーラスの音色が気持ちいい印象的なギターリフとベースの入りが最高ですね。オルガンの暖かく物悲しい音色も曲にあってますし、スネアドラムが2番になって入ってくる構成などもいいです。
この曲は歌詞が素晴らしいことでも有名ですね。二人の人間の絆や関係性についたうたった物という解釈と、「世界には沢山の問題があり、我々はそれに向き合っていかなきゃならない、終わっただなんで夢見るなよ、やつらは分断を煽ってくるけど、そうはさせないさ」というようなある種プロテストソング的な二通りの解釈が見受けられますが、僕は後者の方が好きです。この曲も冷戦下の世界状況に影響を受けた曲の一つだと思っています。マイリー・サイラス&アリアナ・グランデがカバーしたこともあって、前者の解釈が多めですが。いずれにしても傑作だと思います。
14位「リトル・レッド・コルヴェット」プリンス “Little Red Corvette” Prince 1983年
プリンスの魅力はその過剰さにあると思ってまして、プリンス史上最も熱っぽくて逸脱した様なボーカルが聴けるのがこの曲の最大の魅力だと思ってます。
大名曲「パープル・レイン」もそうなんですけど、個人的にはこんな風にぶっ壊れた、激情を見せてくれる歌唱をもっと聴きたかったですね。
過剰であるんだけど、どこか抑制されたところ、整いすぎてる様な感じがあって、個人的にはプリンスはそこが勿体ないなと思ってます。
対してこの曲はリズムから逸脱した様な歌い方をしたり、歌の入力レベルが大きすぎたのか、わざと歪ませてるのか歌の音が割れてるところがあったりして、振り切れてる感じがするんで、そこがいいですね。ブリッジ部分の語りと歌が重なる演出も物凄くツボです。
13位「ザ・メッセージ」グランドマスター・フラッシュ・アンド・ザ・フューリアス・ファイヴ ”The Message” Grandmaster Flash and the Furious Five 1982年
ヒップホップ黎明期を代表する名曲。それまで言葉遊び的な要素が強かったヒップホップに強い社会的なメッセージ性を持ち込んだ最初期の名曲。
歴史的にも当然重要な曲なんですけど、ヒップホップ、ラップの気持ちよさが極めてシンプルな形で提示された一曲でもあって、実は僕が偶然ラジオで聞いて最初にハマったラップソングでもあります。
確か中三だったとおもうんですけど、次の日学校で早速真似してましたからね(笑)。最初聴いたときは本当に衝撃でした。
12位「ルカ」スザンヌ・ヴェガ “Luka” Suzanne Vega 1987年
スザンヌ・ヴェガのヒット曲で児童虐待を子供の視点から描いた一作。
ルカという主人公の一人称で児童虐待の実態が綴られるんですけど「なにがおこったのか尋ねないで、大丈夫かって聞かないで」というリフレインのサビが印象的です。
僕自身はそういう経験はないですが、まあ色々と経験してきたので「ほっといてほしい、他人になにもできるはずがない、でも助けてほしい」みたいなこの主人公の心持はよくわかったりして、泣けてきたりするんで、あんまり気軽には聴けない一曲ですね。
80年代は割とお気楽でハッピーなヒット曲が多いというイメージかもしれないですけど、もちろん実際はこういう曲もあります。スザンヌ・ヴェガはちょっと影のある、けれども透き通った歌声が魅力的で、割と淡々とした歌い方なんだけど表現は豊かというような歌唱なんですよね。重いテーマですし、もうちょっと大袈裟な歌い方だったら全米3位にはならなかったんじゃないですかね。
歌詞を気にしないで洋楽を聴く人は多いとおもうんですけど、こういうシリアスで重要なメッセージもあったりするので、是非歌詞を気にしてみてほしいですね。より深く作品の世界に入り込めるかと思います。
余談ですがスザンヌ・ヴェガには良い曲が他にも沢山あるので、ベスト盤で良いので知らない人は一度聴いてみてもらいたいですね。
11位「ファイト・ザ・パワー」パブリック・エネミー “Fight The Power” Public Enemy 1989年
この曲のPVの監督もつとめたスパイク・リーの映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』(名作です)の冒頭でボクシンググローブをつけた女性がこの曲に併せてただファイティングポーズをとったり踊ったりしてるんですけど、なぜかそのシーンで泣けて来ちゃったことがあります。
この曲はただのラップソング、ヒップホップの曲ではなく、いくつもの重層的な意味が折り重なった優れた音楽作品でもあり、抑圧されてきたアフリカ系アメリカ人からの抗議の表明でもある非常にパワフルな曲です。
この曲の詳細な解説についてはオーサカ=モノレールの中田亮氏によるブログに詳しいので是非読んでみてください。
そういった時代背景抜きにしても抜群のかっこよさはある曲なんですけどね。
Nas, Rapsody, Black Thought, Jahi, YG & QuestLoveなど豪華面子をフィーチャーし、Black Lives Matterを背景にリリースされた2020年ヴァージョンも必聴です。