今日は、車をテーマにした曲について特集したいとおもいます。
皆さんは車の曲と聞いてパッと思い浮かぶものはありますか?
一口に車を取り扱った曲といっても、様々な切り口があります。
今回はそれをテーマごとに見ていきましょう。
今回は洋楽編です (邦楽編はこちら)
いったいどんなカー・ソングが飛び出してくるのでしょうか。
1. 素直に車のことを歌った曲
ザ・直球
- ウディ・ガスリー「カー・ソング」Woody Guthrie “Car Song”
タイトルそのままですね。
ボブ・ディランにも大きな影響を与えたアメリカの伝説的フォークシンガー、ウディ・ガスリーの曲。
ギター1本と彼の声のみによる弾き語り。
直球のタイトルどおり、車のブーブーという自動車の走る擬音を唇を震わせて、表現しているコミカルな曲。
子供の時によくこういう擬音を出すのをやっていた記憶は誰しもあると思うのですが、それを大人が地でやるとこうなります(笑)。
1930年代の後半に、彼の子供たちのためにつくられました。
社会に対する抗議の歌、いわゆるプロテストソングの印象が強い彼ですが、こういう曲も作っているんですね。
公道で繰り広げられるカーレースの歌
- チャック・ベリー「メイベリーン」 Chuck Berry “Maybellene” (1955)
ロックギターの基礎を築いたギタリスト、チャック・ベリーの記念すべきデビューソング。
「アイダ・レッド」という古いカントリーソングを下敷きにして作られました。
つれない恋人、メイベリーンがのるキャデラックと語り手のV8フォードがカーレースを繰り広げると言う内容です。
途中でフォードはオーバーヒートしますが、雨が降ってきてエンジンの熱が冷め、復活したり、なかなかドラマチックでストーリー性のある歌詞です。
最終的に時速167キロまでスピード出してますが、さすがアメリカですね。
道が広いからできる芸当です。
男女の恋愛の駆け引きをおそらく車のカーレースにたとえた曲だと思われますが、女性の方が上手で、最後はメイベリーンに主人公は大きく離されてしまいます。
車が好きすぎる件
- クイーン 「アイム・イン・ラブ・ウィズ・マイカー」Queen “I’m in love with my car” (1975)
イギリスの伝説的ロックバンド、クイーンから一曲。
ドラマーのロジャー・テイラーによる作曲で、ボーカルも彼がつとめています。
クイーンの中でも1番さわやかなルックスのロジャーですが、そんな見た目に反し、歌はコブシの効いたワイルドな歌唱です。
歌詞はタイトルに違わず、車への愛を男が延々と語り続ける内容となっております。車が好きすぎて恋人まで捨ててしまいます。
クイーンの伝記的映画『ボヘミアン・ラプソディー』でも、メンバーからこの曲の歌詞について、からかわれていました。
バンドのローディーであったジョナサン・ハリスという人があまりにも彼の愛車、Triumph TR4が好きすぎるので、この曲は彼に捧げられました。
かの有名な「ボヘミアン・ラプソディー」を含む『オペラ座の夜』というアルバムに収録されています。
2. 男女の性愛の婉曲表現として
- ディープ・パープル「ハイウェイ・スター」Deep Purple “Highway Star”(1972)
イギリスの超大物ハードロックバンドからの超有名曲。
男女の性愛を車を使った比喩で表しています。
そして「オレはハイウェイスター」と歌っている。
どれだけ自信家なんだ(笑)。
しょうもない歌詞と言ったらそれまでですが、そういう男女の性愛について、さまざまな比喩をつかって歌い上げていくのは、古いブルースなどでもよく使われる伝統的な手法です。
レッド・ツェッペリンの「トランプルド・アンダーフット」”Trampled Under Foot”でも同じように車が男女の性的関係のメタファーに使われています。
内容的にはツェッペリンの方が露骨でひどいです(笑)。
3. 人生のメタファーとしての車、道、ハイウェイ
「道」はこの先の人生の進むべき方向性をあらわしたり、いままでしてきたことや功績を表現したりするときに比喩として使われます。
そして、車を人のメタファーとして扱うとき、ハイウェイや道は人生と捉えることもできます。
1970年代からそのキャリアをスタートさせた、ブルース・スプリングスティーンは、車やハイウェイについて数多く歌ってきたアメリカの国民的ロックミュージシャンです。
彼が車や道について歌うとき、それは単純に「車」や「道」そのものではなく、「人生の選択」や「生き方」について歌っているのです。
今回紹介したいのは、「涙のサンダーロード」(Bruce Springsteen “Thunder Road” )、1975年発表の代表作『明日なき暴走』(Born to Run)に収録されている彼の代表曲です。
一組のカップルがいて、男の方が女性に、「この町をでて、いまの生活から抜けだそう」と誘っているストーリー仕立ての曲。
彼らが目指す栄光への道が、タイトルのサンダーロードなのです。
それは雷のように険しくジグザグとした道なのでしょう。
そしてそこへ踏み出す第一歩へ男が誘うとき、「この車に乗って町をでるんだ」と呼びかけるのです。
この時車はただの移動の道具ではありません。
輝かしい未来のチケットなのです。
そんなブルース・スプリングスティーンと彼が描いた夢を揶揄したのが、プリファブ・スプラウトの「カーズ・アンド・ガールズ」(Prefab Sprout ”Cars and Girls”)です。
プリファブ・スプラウトは作詞作曲を担当する、ボーカルのパディ・マクアルーンを中心としたイギリスのバンド。
some things hurt more much more than cars and girls.
「車や女の子よりもずっと、こころをより痛めるようなことが沢山あるんだ…」
そんなサビを持つこの曲は、ブルース・スプリングスティーンが歌詞に織り込んでいるような、車と女の子、アメリカンドリームばかりを追いかけている若者に対する警鐘の歌です。
シングルのジャケットも、ブルース・スプリングスティーンを模したマッチ棒人形の頭が発火しているものを使用しているという熱の入れようです。
同じく高速道路と車のメタファーを使って、ある男女の破滅を描いたのが、イーグルスの「駆け足の人生」(The Eagles “Life in the fast Lane”)。
誰もが羨む美男美女カップルが、身の丈に合っていない派手な生活やドラックで破綻していくのを、車やハイウェイ、信号などの比喩で表現しています。
Fast Laneとは追い越し車線、高速車線のこと。
話は変わりますが、この曲、本当にロックバンドのお手本のような曲だと思います。
バンドをやっている方は是非参考にしてほしいですね。
4. 世界で一番有名なバンドの車ソング
- ビートルズ『ドライブ・マイ・カー』The Beatles “Drive My Car”(1965)
車の歌と聞いて、真っ先にこの曲を思い浮かべた人は多いのではないでしょうか。
ビートルズの6枚目のアルバム、『ラバー・ソウル』から。
ビートルズの音楽はこのアルバムから複雑性を増し、ポピュラーミュージックの可能性を広げていきました。
セールス以外でのクリエィティブな面での快進撃を、ここから推し進めていきます。
実際、この曲もモータウンサウンドを参考に、R&Bなどの要素が取り入れられています。
結果、いままでのビートルズナンバーとは毛色の違うものになっています。
将来自分はスターになると確信する女性が主人公の男性に対して「私の車を運転していい」と提案します。
男は承諾するのですが、「実は車をもっていない、けど運転手は見つかった」というのがオチです。
この曲も先のディープ・パープルの例と同様、性の婉曲表現として車を使っていると考えてみると、歌詞の意味合いが言葉通りではなくなっていきますね。
5. ネガティブな車ソング
皆が車のことを好きというわけではないように、車の曲だからといって車をよく歌っているわけでもありません。
そんなネガティブな車ソングを紹介します。
まずはイギリスのパンクバンド、バズコックスの「ファスト・カー」(Buzzcocks “Fast car”)。
名盤デビューアルバム『アナザー・ミュージック・イン・ア・ディファレント・キッチン 』(Another Music in a Different Kitchen)より。
タイトルが早い車とは直球ですね。
ファストカーとは、ここではスポーツカーの事ととらえていいでしょう。
スポーツカーは危ない、うるさい、うんざりすると、歌われています。
なにもここまで言わなくとも、というぐらいです。
はっきりと”I hate fast cars” とサビ終わりで言い切ってます。
歌詞にラルフネーダーという人が出てきますね。
自動車産業の安全性対策に異議を唱えた人物です。
ブッシュとゴアが戦った2000年の大統領選で、緑の党から大統領候補として出馬したことでも有名です。
同様に車が好意的ではない描かれ方をしているのが、レディオヘッドの「キラー・カーズ」(Radiohead “Killer Cars”)です。
ギターロックの可能性を追求したセカンドアルバム、『ザ・ベンズ』(The Bends)の時期にシングルEPのB面曲として発表されました。
日本版ではボーナストラックとして『ザ・ベンズ』に収められていましたね。
さて肝心の曲ですが、殆ど被害妄想とも言えるような歌詞です。
イカれた連中が車を運転しているから事故ったらどうするんだ、奴等が運転してるのはkiller cars だ、といっています。
確かに車は一歩間違えると大変な事故を引き起こします。
節度ある運転を心がけると同時に、他のドライバーにもそうしてもらいたいと切に願いたいですよね。
6. 高速道路の歌
- クラフトワーク 「アウトバーン」 Kraftwerk “Autobahn”(1974)
ドイツの元祖テクノバンド、クラフトワークによるテクノ最初期の曲。
アウトバーンはドイツの高速道路で、もともとはナチス時代に、失業者対策としてドイツ全域に施工されました。
多くは速度無制限で、高級車から大衆車までガンガン高速でとばしまくっている、日本では考えられない恐ろしい、いや、クルマ好きには夢のような道路ですね。
この曲は「アウトバーン」でのドライブを、電子音楽で疑似体験させるような22分近くある長尺曲。
途中で車の通過音などが電子楽器で表現されています。
7. バンド名が車
- カーズ「ユー・マイト・シンク」 The Cars “You Might Think” (1984)
曲どころか、もう名前自体がクルマなバンドがあります、そう、カーズです。
アメリカでは有名なバンドですが日本ではいまいち知名度が低いです。
メインボーカル兼ギタリストのリック・オケイセックはウィーザーのプロデュースでも知られています。
この曲はプロモーションビデオが面白いことでも有名で、1984年の第一回MTV・ビデオ・ミュージック・アワードで、マイケル・ジャクソンの「スリラー」を抑えて最優秀ビデオ賞をとりました。
大ヒットアルバム『ハートビート・シティ』Heartbeat City (1984)収録。
8. 車と言ったらこのバンド
最後は大御所で締めましょう。
夏といったらTUBE、サザン、というように、車といったらこれだというバンドが実はあるのです。
そう、海、サーフィンで連想されるバンドでもあるアメリカの超有名バンド、ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)です。
彼らの車にまつわる曲は多々あります。
「アイ・ゲット・アラウンド」(I Get Around)、 「リトル・デュース・クーペ」(Little Deuce Coupe) 、「ファン・ファン・ファン」(Fun, Fun, Fun)、「409」(409)、「ジズ・カー・オブ・マイン」(This Car of Mine)、「ヘルプ・ミー・ロンダ」(Help Me, Rhonda)、「リトル・ホンダ」(Little Honda)、
とあげていったらキリがありません。
また『リトル・デュース・クーペ』(1963)という、丸々一枚ホットロッドというカスタムカーについてのアルバムも発表しているぐらいです。
今回は「アイ・ゲット・アラウンド」(“I Get Around”)という曲を紹介したいと思います。
この曲は彼らのアメリカでの初めてのNo.1ヒットになった曲です。
内容的には若者のカーライフについての曲。
get aroundというのは「あちこちに移動する、動き回る」という意味で、車で自分達の町を徘徊するという意味合いですね。
また、日本ではパンクバンド、Hi-STANDARDがカバーしたことでも知られています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
車社会のアメリカ勢ばかりになると思いきや、意外とイギリス勢も多かったですね。
フォルクスワーゲンで有名なドイツも一曲だけのエントリーになりました。
車という切り口だけでもこれだけさまざまな曲があること、
歌詞における車というアイテムの役割、
効果などが分かっていただけたかとおもいます。
今回車曲特集の洋楽編が面白いと感じていただいたかたは、是非、邦楽編もお楽しみください。