今回は頭打ちの名曲について特集していきたいと思います。
ほとんどの方が今?マークが出ていて、「頭打ちって何?」と思われていると思います。
百聞は一見にしかずとはよく言ったもので(今回は一聴にしかずですけど)とりあえず頭打ちのビートの曲を聴いていただきましょう。
最初の十秒ぐらいで結構です。
はいどうでしょう。これが頭打ちのドラムビートになります。
スネアの音を「タン」とすると、バスドラムがなる音を「ドッ」とすると。
タン、タン、タド、タド、っていう感じのビートですね。
一般的なポップとかロックは「ドンドンタッドンドンタッ」って感じで三拍目にスネアの音がくるんですけど、頭打ちは一拍目からスネアが入って
実際に何曲か聴いて、「ああこういう感じね…」と思って下さる方が早いとおもいますので、早速曲紹介いきますね(笑)。
I. 楽しく、わくわくさせるビート
頭打ちのドラムは楽しく、ワクワクする感じを与えてくれるビートなんですよ。
このセクションではそういう曲をみていきます。
ロイ・オービソン「プリティー・ウーマン」Roy Orbison “Oh, Pretty Woman”
頭打ちの威勢が良くて楽しい感じと、有名なギターフレーズがナイスな名曲。
この二つの要素にロイ・オービソンの美しい歌声が混ざり合って独特の艶っぽさ、ロマンティックさを醸し出してますよね。
1964年発表の古い曲ですけれども、いまでもCMやBGMに使われたりするスタンダードソングです。
カーディガンズ「トゥモロー」The Cardigans “Tomorrow”
日本でも人気だった、90年代に主に活躍したスウェーデンのバンド、カーディガンズ。
これも頭打ちによって軽快な感じが出てますね。
要所要所でドラムのフィルインが入って、そのフレージングが気持ちいい。
こういうおかずが頭打ちの曲には必要で、ドラマーのセンスの見せどころだと思います。
あとはテンポキープをきちんとする事も大事ですね。
テンポが速くなりがちなパターンですので。
ボブ・ディラン「アブソリュートリー・スイート・マリー」Bob Dylan “Absolutely Sweet Marie”
2016年にノーベル文学賞を受賞したアメリカのシンガーソングライター、ボブ・ディランの代表作『ブロンド・オン・ブロンド』(Blonde on Blonde 1966年)からの一曲。
ディランのリズム重視の歌い方とか言葉の発し方のおかげでもあるんですけど、ケニー・バトレーの頭打ちのドラミングに注目してるだけでめちゃくちゃ楽しい曲なんですね。
この曲も「トゥモロー」同様ところどころ入るドラムのフィルインも聴きものです。
II. 堂々とした感じ、主張や宣言。
頭打ちは堂々とした感じも、主張や宣言がある曲にぴったりなんですよね。このセクションではそんな曲を紹介していきます。
ストーン・ローゼズ「アイ・アム・ザ・レザレクション」The Stone Roses “I Am the Resurrection”
冒頭で紹介しましたストーン・ローゼズの代表曲。
「レザレグション」というのは復活という意味でしてキリスト教ではthe Resurrectionといえばイエス・キリストの復活をさすんですけど、自分をそれと重ねている凄いタイトル(笑)。
歌詞の内容は自分を落ち込ませてくる相手に対して強烈にNOを突きつける曲。
そうやって「ハッキリと言ってやって嫌いな奴と決別して、本来の自分を取り戻すんだ」という強い意思が「復活」という言葉に現れているんだとおもいます。
ローゼズは2枚目のアルバムも『セカンド・カミング』ってタイトルでこれもイエス・キリストの復活をさす言葉。
凄い自信ですよね。
まあそれだけの実績と人気を誇るバンドではあるんですけれども。
結構キリスト教のモチーフをローゼズは使っています。
そんなに信心深い様には見えないんですが(笑)。
バンドの佇まいが太々しいのと曲の堂々とした宣言、強い確信に満ちたかんじが頭打ちにでている曲でした。
デヴィッド・ボウイ「愛しき反抗」David Bowie ”Rebel Rebel”
実はデヴィッド・ボウイは「今まで声になっていなかった人達の声」を楽曲に落とし込んできた偉大なシンガーソングライターなのですが、この曲もその一部でしょう。
You’ve got your mother in a whirl.
She’s not sure if you’re a boy or a girl.
君はお母さんをクラクラさせちゃったね。
彼女は君が男の子か女の子かわかんないってさ。
という一節で始まるこの曲は今ではLGBTQの人達の一種のアンセムになっています。
ボウイは「男の子か女の子」かわからない「君」を全力で肯定して、「愛してるよ」っていうんですね。
マイノリティの人々にどれだけ励ましになったでしょうか。
そして頭打ちのこのリズムは、歌詞や歌い方、ギターリフと共に、この曲に堂々とする感じを与えています。
正にこの曲にぴったりなビートではないでしょうか。
III. やけくそ、ぶっ飛んでる感じ
「やけくそ」「ぶっ飛んでる」感を出したいときにも使えます。
よりちゃんとした言葉に直すと急性な感じがでるってことですかね。
実際「楽しさ」「堂々としている」感じの頭打ちのビートよりも若干速いテンポの曲が多いです。
XTC 「ライフ・ビギンス・アット・ザ・ホップ」XTC “Life Begins At The Hop”
もともとシングルで発売されたバージョンはどちらかというと「楽しい系」の頭打ちソングで歌詞もそんな感じなんですけど、今回紹介したいのはライブ盤。
まずはスタジオ盤を聴いてもらいましょう。
続いてライブ盤。
どうでしょう。原曲の元気な感じに加えてテンポアップしたことで、やけくそ感がでていませんかね。
次は80年代を代表するポップチューンを聴いてみましょう。
ワム!「フリーダム」Wham! “Freedom”
これって表面的には最初のカテゴリーの「楽しい」にどちらかといえば入るんじゃないの?と思われたかもしれません。
もの凄いポップで弾けるような明るい雰囲気の曲ですもんね。
けど歌詞を読むと全然明るい曲では無いんです。
実は「浮気な恋人」を持つ人の歌でして、それでサビで「君の自由なんて望んじゃいない」ってうたってるんですね。
そうすると楽しい頭打ちのビートも歌詞に引きずられる様にやけくそ気味に響いてくるから不思議です。
ディープ・パープル「スペース・トラッキン」Deep Purple “Space Trackin’”
ハード・ロックといえば、ディープ・パープル。
そしてディープ・パープルの代表作といえばアルバム『マシーン・ヘッド』ですが、この曲はそんな名盤のラストを彩るハードな頭打ちのロックナンバーです。
ポピュラーミュージックの長い歴史の中で、様々な音楽ジャンルがあって、なかにはその音の凶暴さを標榜するジャンルも沢山あるんですけど、この曲はそんな曲たちに引けをとってないですね。
それどころか、かなりトップランクでテンションが高くて、凶悪なナンバーだとおもいます。
その要因の一端を担っているのが間違いなく、この頭打ちのビートだと思います。
宇宙を舞台にはしゃぎまわる、ぶっ飛んだ歌詞もそうですけど、やけくそ感が最高ですね。
IV. 頭打ち+三拍子=ストーンズ?
ローリング・ストーンズ「サディスファクション」The Rolling Stones ” (I Can’t Get No) Satisfaction”
頭打ちの曲の代表曲と言えばこれなんじゃないでしょうか。
正直ストーンズの中ではそんなに好きな曲でもないです。
しかしこのリズムは実にストーンズ的、ストーンズのシグネチャーリズムとして認知されている感はあります。
どこが普通の頭打ちと違っているかというと、頭打ちのリズムに、タンバリンで三拍子のリズムが重なってるんですね。
これを踏襲してブルージーで歪んだギターで味付けすると一気にストーンズ感が出るんですよ。
さて実際にそんな曲を見てみましょう。
Mr. Children「ラヴ コネクション」
ストーンズ感を狙って作曲された曲らしいです。
頭打ちのドラム、それに重なる3拍子…。
そして歪んだギター…。
もうまんまですね(笑)。
女性コーラスも入っているんですけど、それもストーンズ感に寄与しています。
ストーンズは当時のR&Bがそうであったように厚みのある女性コーラスを取り入れてましたからね(「ダイスをころがせ」「ギミー・シェルター」など)。
そもそもストーンズのサウンドのルーツの大きな部分って当時のR&Bだったりするんですけど。
もう一つ、ストーンズっぽさを踏襲している曲を聴いてみましょう。
プライマル・スクリーム「ロックス」Primal Scream “Rocks”
これもストーンズが提示したロック、90年代からすると「古き良きロック」ですかね。
それを1990年代にアップデートして展開して見せた曲だと思います。
ソウルフルな女性コーラスも入ってますね。
ストーンズのパロディをやりたいなら上記パターンを踏襲すればできます。
V. 頭打ちを効果的に取り入れる
実際には曲を通してずっと頭打ちっていうのは結構ハードルが高いと思ってます。
やっぱり一辺倒の曲に聞こえる危険性もありますし、それなりの勢い、威勢の良さも曲を通して求められますからね。
という事ででは実際に頭打ちを曲にどの様に取り入れてるのかみていきたいです。
Mr. Children「旅人」
またミスチルで恐縮なんですけど、良い例なんで取り上げてみました。
この頃は5枚目のアルバム『深海』リリース前で、ミスチルが最もロックしてた時期ですね。
シングル「マシンガンをぶっ放せ」のカップリングとして入っていた曲です。
頭打ちが使われてるのは間奏の部分です。
この頭打ちのドラムとギターのカッコいいカッティングで、繰り返される「神頼み」って言う皮肉まじりの言葉だったり、「猥褻」って言う刺激的な言葉だったりがますますその意味合いを強くしていく様なかんじがありますよね。
アニメソング行ってみましょうか。
平野綾「冒険でしょでしょ?」
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』のアニメオープニング曲ですけど、実に頭打ちを効果的に詰め込んだ曲アレンジで、かなり良質なサンプル。
この1分半の間に3回も頭打ちのビートが使われてます。
まずはイントロ部分。ここで最初のつかみからグッともりあがりますね。
次はBメロ部分。ここも頭打ちの楽しい感じ、気分を盛り上げてくれる感じがかなり貢献してますね。
Aメロとの違いもはっきり出ます。
実際にこの部分アニメでは、登場人物がチアリーダーや応援団風のコスチュームで鼓舞する様な絵になってます。
で最後サビの後半部ですね。
曲の終わりに向けてサビより更にもう一つ盛り上げて畳み掛ける所に頭打ちが使われてます。
それで余韻を残してサッと終わる。
実に見事な90秒だとおもいます。
楽しくみせたいところ、グッと盛り上げたい所に頭打ちが使われてるのがわかる一曲でした。
アニソンは頭打ちが結構多いと思いますね。
パッと華やかで勢いのある雰囲気を出せるので、徐々に盛り上げる尺がとりにくいアニソンでは重宝するんでしょうね。
ジミ・ヘンドリックス「紫のけむり」Jimi Hendrix “Purple Haze”
最後は正統派というか定番物で。
「パープル・ヘイズ」はジミヘンのみならずロックを代表する一曲ですが、実際頭打ちなのはイントロとギターソロ終わりの間奏部分、今までの曲よりもスローな頭打ちですよね。
勿論ギターが使ってるコードの不安感も大きいんですけど、テンポを落とした頭打ちのドラムで不穏な感じがよく出てます。
まとめ
どうだったでしょうか。
頭打ちのリズムの魅力について認識していただけたかと思います。
結構定番なパターンだとおもいますので、探せは結構あると思います。
そしてドラマーの方は是非アレンジの参考にしていただきたいですね。
頭打ちをスネアドラムでやっちゃうとトゥーマッチだったりするけど要素は取り入れたいな、っていうときがあると思います。
そんな時はカウベルが使われたりしますね。
カウベルをフィーチャーした曲なんかも取り上げてみたいですね。