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邦楽アルバムベスト100

いよいよベスト10の発表です。

作り始めた時は月並みなラインナップにならないかなとちょっと心配してましたが、結構個性的なベスト10になったような気がします。

【10位】こんな「楽しい」アルバムは他にない!ユーモラスで自然と体が動きだすダンサブルな名盤。

大滝詠一『NIAGARA MOON』1975年

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『ロングバケーション』が理想的な50sアメリカンポップスを再現したリゾートミュージックの傑作なら、本作は最強のノベルティソング(コミックソング)集!

林立夫、上原裕という2名の日本を代表するドラマーによる素晴らしいドラミングが最高です。ドラマーはランチ何回か抜いて買うべし。

本人作詞、駄洒落満載の楽しい歌詞も最高にファンキーで楽しい超名盤。

おすすめの曲
「論寒牛男」
ギター鈴木茂。 タイトルはもちろんLonesome cowboyの当て字。カントリーロックにブギウギピアノ。超カッコいい。特に疾走感とロールがたまらない林立夫のドラムと、バッキバギの速いパッセージと渋いスライドが披露されるギターが最高です。
「ロックン・ロール・マーチ」この曲も林立夫のドラムが主役みたいなもの。最初からいきなり魅せる、ブレイク時のカッコいいソロもあり。ニューオリンズの言及があるけどアルバムが全体的にニューオリンズの音楽の影響受けてる一枚ですね。ニューオリンズ、カントリー、古いロックンロール、ノベルティーソングの理想的ミックス。
「ハンド・クラップ・ルンバ」ドラムは上原裕。ずっとスネアがなってて、めっちゃ気持ちいい。ノベルティーソング(コミックソング)をやるというのがこのアルバムのコンセプトですけど、それの最たる曲でユーモラスな歌詞が聴きどころ。やっぱり大滝さん自身によるコミカルな作詞やリズムを重視した歌唱が、松本隆とのタッグやクルーナー唱法に『ロンバケ』以降とってかわられて封印されてしまったというのはとっても残念。曲自体がルンバと言うよりメロのリズムがルンバ的リズムなのが面白いです。ユーモアも下品ではなくて品があってクスリと笑える感じなのが心地いいです。
「福生ストラット(パートII)」東京都福生市についての歌。福生は福が生まれる書くので、福生の切符がお守り代わりになってたりしたみたいですね。そんなことについて歌ってます。僕もこの曲を聴いてわざわざ福生まで行きました。ウルフルズがこれを真似して「大阪ストラット」という曲を作ってます。この曲は個人史的にも結構重要ですね。やっぱりリズムの楽しさを体に叩き込まれたのはこの曲とグランドマスターフラッシュの「メッセージ」とジェームス・ブラウンの「Papa’s Brand New Bag」だったので。
「シャックリ・ママさん」バディー・ホリーに代表されるシャックリのような歌い方、ヒーカップ唱法から着想を得た曲。スライドギターが鈴木茂なんですけど一発で、あ、鈴木茂だ!ってなるんですよね。スライドギターの個性の出方って面白いです。林立夫のドラムがまたまたカッコいい。疾走感のあるロックナンバー。

【9位】 海外でも人気上昇中のシティ・ポップを代表するファンキーでポップな大名盤

山下達郎『For You』1982年

夏への扉がもしもあるのなら、それはこのアルバムなんじゃないでしょうか。

いつでも永遠の午後の昼下がりに連れて行ってくれる、ドライブミュージック、リゾートミュージックのマスターピース。

一家に一枚。至高のMusic Book。聴けばメロディーの雨が肩を濡らす大名盤。

これからもずっと聴くと思います。

このアルバムについては実は以前に夏アルバム特集の時に取り上げたので、そちらも見ていただきたいですね。ここではそこで取り上げた以外の曲について主に語りたいと思います。

おすすめの曲
「Hey Reporter!」
竹内まりやとの結婚関連でパパラッチに付き纏われた怒りから出来たスロウファンクナンバー。珍しく皮肉たっぷりに凄みを利かせた歌唱で、達郎さんを怒らせたらこんな曲が出来るのかと思うと、もっと怒らせて欲しいと思う笑。
「Music Book」メロウでスウィートなソウルミュージック。本アルバムは吉田美奈子さんの作詞曲が半分を占めているんだけど、この曲もそうで歌詞が最高。 「メロディーの雨が肩を濡らして」 とかタイトルのミュージックブック自体がもう素敵すぎ。一文字ずつ上下交互に刻まれるサビのメロディーラインも最高。
「LOVELAND, ISLAND」「サンバとマイアミTKビートを合わせたような曲調」とは本人の談。爽やかな夏にぴったりの超名曲、海岸線でドライブしながら聴くのにこれ以上ぴったりな曲は無いと思います。

【8位】芥川賞作家を有していた、日本のパンクを代表するバンドによる最初で最後の一枚。

INU『メシ喰うな』1981年

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あらゆるパンク、New Waveのアルバムで一番聴いてる気がしますね。

ポップで攻撃的で音楽性豊かで歌詞も鋭い。無敵じゃないすか。

特に北田昌宏の実に音楽的に豊潤なギターフレーズは天才的だと思います。ギタリスト必聴。

おすすめの曲
「フェイド・アウト」
ジャケのインパクトや歌詞の攻撃性やわかりやすさでPunkで括られちゃいますけど、その変態的で凝ったギターフレーズはどちらかというとNew Waveやギターポップ的な感じですね。このギターリフとかシンプルにかき鳴らされるだけなんだけどスゲー効果的なギターソロだと思います。あとはサビ部分のアルペジオとかアイデアがいっぱい。 このままバンド存続してたらXTCみたいなバンドになったんじゃ無いかとかあらぬ妄想をしちゃいますね。作家としての町田さんは大好きで、後のソロ作の詩も好きです。しかし、INU時代の詩は、勿論いいんですけど、僕としてはギターの変態ポップ性の方が優ってるって言う感じです。別に優劣を決めなきゃいかんことは無いんですけど。作家としての町田さんのテーマに通づる所詩はところどころあるんですけど、まだユーモアと不条理さがまだINUの段階では薄いとは思います。やっぱり芥川賞作家がいたバンドみたいなくくり方が多いので、それだけじゃ無いぞということは強調しておきたいですね。というかバンド総体で魅力的だし、特にギターはやばくて、それでこのポジションの評価だってことを強調したいです。
「つるつるの壺」本作で一曲選ぶとしたらやっぱりこれ。なんでしょうこの不穏な雰囲気とポップ性を自在に行き来する自由過ぎるサウンドは。イントロの数秒のギターの動きだけで不穏さとポップネスがもう爆発してるんすよね。ギターソロも同様で。全編そんなスリリングな曲なんですよ。テーマはまぁパンクによくあるテーマ、社会のシステム、コマーシャリズムにスポイルされる個人、なんですけど、やっぱり表現方法や切り口が独特で鋭いです。
「メシ喰うな!」二つのコードをずっと繰り返してるだけの構造としてはシンプルだがダークな沼の様なサウンドの表題曲。この曲を反転させてスターリンは「飯食わせろ」と歌ったのは有名な話。「ライトサイダーB (スカッと地獄)」本作で1番ポップなナンバー。ギターロックスターとして結構しっかりとした作り。そういう意味でもいわゆるパンクっぽくはない。

【7位】イカ天を代表するバンドの、世間に衝撃を与えた異色デビュー作。

たま『さんだる』1990年

色物という偏見を捨て耳をすませてみると驚くべき世界が待っている名盤。メンバー全員が作詞作曲し、それぞれのパートでこだわりを見せ、叙情性と物語性に富む楽曲が展開される様に圧倒されます。一見童話の様で実は様々な広がりを見せる歌詞も味わい深く、最も過小評価されている大名盤。

詩や曲を書いた人が基本的に歌うスタイルなので、たまは4人のボーカリストがいる事になります。世間的には「さよなら人類」のヒットを飛ばした柳原さんと、フロントに立つ事が多い知久さんがメインボーカリストと思われがちですが、僕はメインボーカリストはいないという認識で、いわばみんな主役でなんです。

4人のボーカリストがほぼ均等にいるバンドってなかなか無いですよね。そういう意味でも凄く稀有なバンドだったなぁと。フロントマン4人みたいな。 他にいますかね。そんなバンド。

そして全員「たま」としか言いようのない世界観のある独特な歌詞をかけるのは凄いですね。普通4人メンバーいて4人歌詞書いたら、1人ぐらいは「詩的」ではなく、普通の「歌詞」「散文」しか書けない人がいてもなんら不思議では無いんですけど、「たま」は全員「詩」になってる。

奇跡的と言っても過言では無いと思います。

楽器の編成もユニークで普通のロックバンドが使うエレキギターとかドラムセットは使わずに、マンドリン、アコーディオンやラッパとか、独自のパーカッションの編成とかを組んでやっています。

おすすめの曲
「おるがん」
作詞・作曲:知久寿焼。 僕が死んだ日 という凄いつかみで入る曲。この歌詞は結構衝撃を受けましたね。死者の視点から物語が語られるというのも斬新でした。小さな子供の死がテーマなので悲しいんだけど、柔らかな童話的な世界でもあり、ユーモアもあったりで味わいが重層的なところも魅力です。
「オゾンのダンス」作詞・作曲:柳原幼一郎。 一見童話の様な無邪気な世界観ですが、先ほどの「おるがん」が濃厚な「死」の香りを漂わせていたのと同じく、意外とセクシャルな比喩もあったりします。
「日本でよかった」作詞・作曲:滝本晃司。ベースの滝本さんはビジュアルも歌い方も他のメンバーより一見「普通」に見え、真っ先に脱退しそうな感じがしましたが、最後まで残ったメンバーであり、この人の描く世界も相当風変りです。「父や母」という歌の所でドラムの石川さんの「mommy and daddy」ってコーラスが入って笑えます。自分の曲でこんなの入れられたら怒りますが、OKなんでしょうね(笑)。
「学校に間に合わない」これは本作でも相当気合のはいったトラック。 ドラムの石川さん(ランニングの人)の大作ですね。 ほぼプログレ笑。他にもプログレって言ってる人がいて自分だけじゃ無いんだなと。
「さよなら人類」一番のヒット作かつ、代表作。おそらく多くの方は「たま」というと真っ先にこの曲を思い浮かべるのではないでしょうか。キーボードの柳原さんの曲。 なんだかんだで凄い曲だと思うし意外とメッセージ性もあります。
「らんちう」ギターの知久さんの曲で後半のハイライトの一つ。 シアトリカルな曲で、楽器を普通のバンド編成とかにしたらプログレに聞こえそうですね。

【6位】個性豊かなメンバーがそれぞれ実力を発揮して作られたバラエティ豊かな一枚。

ユニコーン『ケダモノの嵐』1990年

適切なアレンジを施された優れた楽曲が沢山詰まっており、音楽性もバラエティも豊かで飽きのこないアルバム。ユーモアあり、怖い曲もあり、シリアスな物もありで後期ビートルズのアルバムの様な満足感があじわえますね。

この音楽的な幅広さや豊かさというのはやはり個々のメンバーがみんな作曲能力を有していることが大きな要因だと思います。

先の「たま」もそうですけどメンバーがそれぞれ表現したい独自の世界観をもっていて、それをユニコーンという器の中でどう表現していこうかという姿勢でバンドに望んでるんですよね。それは3枚目の『服部』から顕著になってきていて、やはりどんどんそれでメンバーがバラバラになってしまうんですけど。この4枚目のアルバムはそのバランスがいいんですよね。

おすすめの曲
「命果てるまで〜第三の男〜命果てるまで」
作詞・作曲:奥田民生。いきなりウクレレで始まりハワイアンな雰囲気がある一曲目。間奏で「第三の男」を挿入していますね。
「エレジー」作詞・作曲:奥田民生。これは怖い曲ですね…。男性が女性を柔らかな口調で部屋に誘うのですが…。サビの部分ではその結末が提示されます。
「自転車泥棒」作詞・作曲:手島いさむ。本作で1番の名曲。ずっと残るであろう曲。タイトルはイタリア映画の傑作から。映画はものすごく暗い話なんですけど、この曲は爽やかですね。少年少女の夏の日の一コマ。 ボーカルは民生さんと阿部ちゃん。
「スライム プリーズ」作詞・作曲:堀内一史(EBI)。打ち込みやサンプリングを主体にした楽曲。ウルトラセブンのイントロやユニコーン初期の楽曲「Fallin’ Night」もサンプリング。堀内さんはメンバーのなかでも爽やかな歌声とルックスなんですけどゲスい感じの歌詞と歌で面白いです。
「フーガ」作詞・作曲:堀内一史(EBI)。歌はEBIちゃんと阿部ちゃん。これはロックなんでしょうか、ポップなんでしょうか笑。謎のウェディングソング。
「働く男」作詞・作曲:奥田民生。忙しくて彼女とデートする暇もない男の話だが、まだブラック企業や過労死が表沙汰になる前の曲なので、まだ余裕は感じますね…。むしろ何のために働いているのだろうという問い掛け的なニュアンスの方がまだ強い。あとこの頃はバブル崩壊前夜で給料は良かったはず…。
「スターな男」作詞:阿部義晴 、作曲:奥田民生。「典型的なロックスター、だけどその放蕩三昧のツアーの裏で家では大人しい奥さんがいるというギャップが面白いでしょ」という今となってはどっちの幻想も時代にそぐわないけど、メンバーのソロ合戦が楽しめるストレートなロックチューン。

【5位】日本のヒップホップ史の中で最も重要でもっと影響力を持つクラシックな一枚。

キングギドラ『空からの力』1995年

韻が固くて滅茶苦茶気持ちいいし、ネタも最高だし、日本語ラップ史上最初にして最もクラシックの名にふさわしい名盤だし、越えるべき壁としてこれからも立ち塞がっていくモノリス、金字塔だと思います。

とにかく捨て曲がないし、一曲除いて全部(skitは別)2人(ZEEBRAK DUB SHINE)のラップだけでガンガン聴かせるし、日本語ラップ創成期の熱い思いがビシバシ伝わってきて痺れるんですよね。そういった意味である種ドキュメンタリー的な要素もあり、再現不可能な空気感もあります。

ラップグループだと正直好みのリリック書くMCとそうでないMCがいたり、明らかにメンバー間の技量に差があったりするんですが、もうこのアルバムの2人はどっちも最上級の格好良さ。

今のヒップホップが到達した地点からすると基本的すぎるのかも知れないですけど、日本語ラップの教科書、永遠のマスターピースだと思います。

客演が少ないというのも特徴ですね。ヒップホップのアルバムってやっぱり客演の豪華さが魅力の一つだと思うんですけど、このアルバムでちゃんとラップの入ってる客演は「大掃除」のT.A.K.THE RHYMEHEADしかないんです。客演の力に全く頼ってないところが凄いですよね。それで一枚飽きずに聴かせるのは。

おすすめの曲
「大掃除」
トラックはZEEBRA。この曲のKダブのライムは1から順に百万までどんどん数字を積み重ねていくっていう凄いやつなんですけど、それだけじゃなくてユーモアを含んでるところがいい。圧倒されつつもクスッとしちゃうところがツボで。「ライムの醍醐味 手を抜く粗大ゴミ 結局最後にシャイン 送る涅槃」とか「まさかの技に キャンプテン翼 もイラつく 百点のうまさ」のラインとか凄いすきですね。テクに圧倒される部分と笑える部分が同居してて。
「コードナンバー0117」トラックはDJ Oasis 。 このアルバムで一曲選ぶとしたらコレか最後の曲。 特に後半2人で交互に畳み掛ける所とかやばい。ライムスターの「口から出まかせ」もそうなんですけどこの2人が交互に畳み掛けると破壊力がやばい。
「フリースタイル・ダンジョン」ジブさんのソロ曲で同番組の元ネタ。そういう事なんですよね。ヒップホップの番組名になるぐらいのアルバムなんですよ。
「星の死阻止」環境問題をテーマにした一曲。環境問題はずっと問題になっていますけど、盛り上がっている時期と、そうでもない時期があると思います。そこで、1995年という本作のタイミングは、特に環境問題が盛り上がっていた時期でもないと思うので、 そういう意味でも、この曲をこの時に出した意義や着眼点は流石。
「スタア誕生」1人のスターを夢見る少女の転落の物語。タイトルは有名なジュディ・ガーランド主演のミュージカル映画のから。
「真実の弾丸」刑事物ドラマに使われてそうな渋くてアーバンなトラックだけでもカッコいいのに、ソリッドでラウドなドラムまで重ねたトラックが最高にカッコいい。2人のリリックもキレッキレで本作を代表する一曲。

【4位】架空の名作アニメ9本の名曲を集めた様なストーリー性が高く、POPな曲がつまった名盤。

相対性理論『ハイファイ新書』2009年

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一曲一曲に伝えたい物語があり、全員がその世界観を表現するためにピタリと息を合わせた様な全9曲。そのため、異常な没入感と中毒性を兼ね備えた危ない1枚。やがて曲ではなく、曲がつづる物語を愛する様になってはまっていきます。

言うまでもなくタイトルは『解体新書』杉田玄白が訳した医学書のパロディ。こういうダジャレとかパロディをクールに見せたのも彼らの功績だと思います。

あと特定の商品名を大胆にセンスよく放り込んでくるのが凄いですね。テレ東とか「フジカラーで写す」とか「バーモント」とか。まぁ後者はアメリカの州からかもしれないけど。ファーストでは言葉は面白いけど演奏が追いついていなかった感じでしたが、本作では演奏力が世界観に追いついた感じ。

そのバランスが良かったんだけど3rdはその奇跡的バランスがちょっと崩れた感じはありますね。

本作についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

【3位】お洒落で、生意気で、途轍もなくPOP…。青春を文学的にPOPに切り取った様な奇跡的な一枚。

Flipper’s Guitar 『CAMERA TALK』1990年

小山田圭吾と小沢健二という二人のトップクリエーターががっつり組み合って作られたポップの名盤。

青春という病の最も輝いている瞬間(憂鬱、焦燥、情熱、怠惰、憧憬)だけを切り取って、文学的且つポップに仕立てた大傑作。

自分は十代で出会えてラッキーだったと思います。前作では英語の歌詞だけでしたが、今回は逆に日本語だけになった2枚目。本作からクレジットをDouble K.O. Corp.に。二人のイニシャルが両方KOなので、そこからですね。ちょっと出来過ぎてますね(笑)。

ただの推測で根拠はないんですけど2人が1番仲が良かった時期のドキュメントみたいに感じてしまうんですよね。

『ヘッド博士』はもう2人の心が離れてしまってる感じがするし、音も借り物感(サンプリングのせいでは無く目指す方向の話)を強く感じて寂しくて、推せないでいますね。

フリッパーズはサウンドも勿論いいのですが、若きオザケンの歌詞が好きですね。 詩的に料理された言葉が適切なメロディに乗せられて、そこにちょっと若さと情熱のスパイスを振りかけた様な。クールで斜に構えた情熱。『ヘッド博士』は調理法は上手くなったけど最後のスパイスは振りかけられてない、みたいな感じ。 フリッパーズはロジカルには語れないですね。少なくても僕は。

おすすめの曲
「Young, Alive, in Love/恋とマシンガン」
おそらくフリッパーズで一番有名な曲かと。フレンチポップやお洒落な映画のサントラ、ジャズからエッセンスを抜き出してつくられた「お洒落」の塊の様な曲。オザケン汁が溢れてる曲で、完全に後追いでしたので、ボーカルもオザケンだと当初は勘違いしていました…。
「Camera! Camera! Camera!/カメラ!カメラ!カメラ!」テクノ調の打ち込み曲。これが後にシングルとして発売されるギターロックバージョンだったら1位…少なくても2位だった。 これだけ浮いてる気がするし…。 歌詞も曲も文句なしの名曲なのですが、アレンジが…。
「Summer Beauty 1990/ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマー・ビューティー計画」
イントロが好き。ブラジル音楽の爽やかなところを詰め込んだ様な程よい暑さのサマーチューン。 何をいったってむださ。
「Haircut 100/バスルームで髪を切る100の方法」タイトルは某バンド名から拝借。かといってヘアカット100っぽいわけでもないです。ドラムアレンジが好きですね。特に畳み掛けるラストとか。
「Big Bad Bingo/ビッグ・バッド・ビンゴ」フリッパーズで一番好きな曲なんだけどなんで好きなのかよく説明できないし、なんのことを歌ってるのかわかる様でわからない。ゴダールやカラックスの映画の最高にポップでCoolでキュートな部分を固めて曲にした様なそんな心地よさ。
「Wild Wild Summer/ワイルド・サマー/ビートでゴーゴー」イントロがうるさい笑。 無くても全く困らない曲。 文化部の運動部に対する恨み辛みが見え隠れする一曲。

【2位】個性豊かな濃い面子が集まったHip Hopグループの邦楽Hip Hopを代表する名盤

Buddha Brand 『病める無限のブッダの世界〜Best Of The Best(金字塔)〜』2000年

DEV LARGE、CQ、NIPPSの三名のillなMCにDJ MASTERKEYのとんでもない濃い面子があつまったHip Hopグループ唯一のフルアルバム。

中身が素晴らしいのは勿論、Hip hopに本格的に傾倒していくきっかけになり、更にそこからリズムを軸にして音楽を聴く様になり、パラダイムシフトを起こしてくれた、個人史としても重要な一枚。

今まで発表したシングルの曲を集め、インスト曲をプラスした実質ベスト的な内容。

とにかく3人のMCの繰り出す言葉の気持ちよさですよね。それぞれほんと個性的で。

NIPPSはほんとにぶっ飛んでますね。他の面子もぶっ飛んでるんですけどこの方はさらに上をいってますね。

CQは最初は他の二人に比べるととっつきにくいのですが、徐々に癖になってくるライミングですね。他の二人よりもあんまり英語を交えてカッコいいパッセージを次々くりだしてくるわけじゃなくて、代わりにマニアックな映画とか、固有名詞をガンガン連想ゲームみたいにしてつなげてきて、わかる人にはたまんないですね。あとで歌詞を見たとき、あ、これはこことかかってるのね、というような発見も多いです。

DEV LARGEは英語も交えてとにかく高速で切れ味のよい攻撃力の高いラップを繰り出してきますので、始めて聴いたときからとにかく衝撃をうけましたね。とにかく恰好いいんです。一番すきなMCの一人ですね。残念ながら2015年に45歳の若さで他界されてしまうんですが、本当に惜しいかたをなくしましたよね…。

トラックはDEV LARGEがほとんど作っているんですが、ソウルや、和もの含むレアグルーヴ、ファンク、ジャズを自在にサンプリングした極上のトラックばかりなんですよね。サンプリングアートとしても楽しめる一枚だと思います。

メンバーの名前や通り名が複数あるのも面白い笑。大峠雷音、緑の5本指、飛葉飛火、とか。ジミ・ちょっとヘンデスとか笑。葛飾北斎とか大滝さんとか、名前がいっぱいあるアーティストが好きなんですよね。

おすすめの曲
「人間発電所」
日本のはヒップホップを語る上で避けては通れないクラシックですね。DEV LARGEの作る極上のトラック上にそれぞれのMCが個性豊かな世界が展開されます。内容は終始言葉遊びとセルフ・ボースティング(自分自慢)に徹底してるんですけど、なんか感動的なんですよね。

【1位】様々な音楽性を内包しつつも不思議と統一感があり、21世紀の時代のムードを体現する傑作。

くるり『THE WORLD IS MINE』2002年

日々思う事、ちょっとした高揚、閉塞感、優しさ、温もり、愛、倦怠と退屈、諦念、微かな希望。2000年以降延々と鳴っている通奏低音、時代のムードを最も現しているアルバム。

タイトルは新井英樹の漫画『ザ・ワールド・イズ・マイン』から。漫画も衝撃的な名作ですのでおススメです。

  • 「GUILTY」

いっそ悪いことやって

つかまってしまおうかな

欲しいものは諦めてる

持ってるものにも飽きてきた

どうにもならんし

正体不明の憂鬱、やるせなさ、諦念…。とても共感してしまいますね…。静かな曲調から盛り上がって一息つくその展開は、まるで水中にずっと潜っていてやっと息継ぎできたかのような解放感があります。

  • 「静かの海」


ファーストの頃からこう言うIDMや実験音楽的なアプローチって実はあったんですけど、それが美しくまとまった感じだと思います。詩もよい。単体で聴くよりもやっぱり一曲目から続けて聴きたいですね。

  • 「GO BACK TO CHINA」


もの凄いかっこいいギターロック。特にギターソロ。 今作からメンバーの大学の先輩であった大村達身さんが参加してるんですけど、その効果が顕著にあらわれた曲かと。二曲目と音楽性は全然違うんだけどなぜがバラバラな感じがしないのが不思議。

  • 「WORLD’S END SUPERNOVA -Mix “Matuli”-」


問答無用の名曲。やっぱりコレと「ばらの花」「東京」を生み出したっていうのは凄いですよ。 「あなた」とは誰なのか、神か?ロックスターか?

音楽的には完全にエレクトロニカ、ダンスミュージックの領域なんですけど、バンドらしくはないんですけど、同時に凄く「くるり的」でもあって…。

ラフラフ&ダンスミュージック。

  • 「BUTTERSAND / PIANORGAN」


「WORLD’S END SUPERNOVA」とつながっている曲。「WORLD’S END SUPERNOVA」の繋がって無いのを聴きたくてわざわざシングル盤を買い求めた記憶…。

  • 「アマデウス」


電子音楽の次はピアノとチェロ、コントラバス、バンド編成でも無い感じ。ほんとバラバラですよね。 アマデウスとは勿論モーツァルトのこと。最初全然いいと思わなかったんだけど今は凄く好きです。

  • 「ARMY」


コレも最初は全然いいなって思わなかったんだけど今はめちゃくちゃ名曲だと思ってます。レディオヘッドがもうちょいシンプルになった様な感じですね。 くるりの、歌詞もそうだし、「歌」が好きだったから、言葉数がそもそも少ないこのアルバムはほんと最初聴いた時不満しかありませんでした(笑)。スーパーカーの後期とかも最初そうでしたね。 歌が聴きたいのにこんなに詩を短くしちゃって!と思ってた。 けどそのミニマルな詩を味わえる様になって180度意見が変わりましたね。

  • 「MIND THE GAP」


ブレイクビーツにバグパイプで英語を日本語ぽくサンプリングしてみました的な、もうわけわからん曲(笑)。けれど意外と中毒性があるんですよ。

しかしファーストから色々実験的なインストとかやってましたから今考えるとこういう音楽性も全然不思議じゃ無いんですよね。

「 昔々の話」っていうイントロの女性の独白がいい。あとセミのSEとかも郷愁を誘うというか卑怯ですね(笑)。SEを効果的に使うのが実はうまいバンド。

  • 「水中モーター」


ベースの佐藤さんの歌唱。シンプルでわかりやすいギターロックで、聴きやすいので、最初はこの曲を拠り所にしてこのアルバムを聴いてました。

  • 「男の子と女の子」


本作で一番オーソドックスな曲で人気も高い曲。 けど自分は凄い違和感を覚えてました。 メロディーへの言葉の乗せ方が今までのくるりよりも凄いラフな仕上がりなんですよね。

本作以前だとメロディーに合う様にもうちょっと詩をいじると思うんだけど、これは詩を重視した感じになってます。多少詩のメロディーへの乗り方が歪でも気にして無い感じ。 そこがモヤモヤしてたのに、周りはいつものくるりの曲だーみたいな反応だったのがなんか嫌でしたね(笑)。

  • 「THANK YOU MY GIRL」


コレもストレートにいい曲で肩透かしを食らいました。最初は「後半やる気無いな」って思ってあんまり聴いてなかったんですね。後半の方が聴きやすいのに。

  • 「砂の星」


三拍子で童話的な世界観のほんわかする一曲。普通にいい曲。 バックでずっとホワホワなってるキーボードかギターかが、なんかドイツのバンドNEUっぽいんですよね。

  • 「PEARL RIVER」


曲の後半にずっとボートの漕ぐ音がながれます。これもNEUのファーストアルバムの最後の曲のアイデアに似てます。綺麗な終わり方ですね。ASMRという聴覚体験に近いものを感じます。

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10位から1位まとめ

ということで、くるりの『THE WORLD IS MINE』が1位となりました。やってる音楽スタイルは結構様々なんだけど不思議と統一感がある一枚で総合力ですっぽりと1位に収まってしまいました。僕は飽きっぽいから色んなジャンルが入ってるというのも高ポイントです(笑)。

一曲一曲の破壊力でコレより優れたアルバムは結構沢山あると思うんですけど、時代を捉えてると思ったし自分の中ではリリースから本当に徐々に重要度が増していってる1枚なんですよね。まさか1位とはおもってませんでしたが。

実は2位と3位とコレで迷ってましたが、アルバムをトータルでみて1番1位としてしっくり来たのがこれでしたね。

ベストアルバムは除外というルールでしたが、複数のフルアルバムから選出されたベストアルバムは除外ということで、今作が初のフルアルバムで、いままでシングル(かミニアルバム)しかでていなかったのでOKとしました。コレについては結構悩んで除外すべきかともおもってんですけど、ありとしました。

途中で1位にしていた時期もあったんですけど、やっぱりそこが引っかかっていたのもあって、2位に落ち着いた感じです。

あと2位なのにコメント量がちょっと少ないんですけど、なかなか細に入り説明が難しい音楽でして、とにかく、聴いてその楽しさを味わってほしいの一言ですよね。

大滝詠一『NIAGARA MOON』。やっぱりこの企画をやって良かったのはこのアルバムを上位にできた事ですかね。 ストリーミングサービスやYouTubeに公式音源がない事や『ロングバケーション』があまりにも有名なせいで絶対損してるアルバムだと思うんですけどね。

やっぱり『NIAGARA MOON』を聴いちゃうと『ロンバケ』はリズム面とユーモアの面で不満があるし、完璧なアルバムっていうのは抵抗あるし持ち上げられすぎな気がするんですよね。そういう意味でリズム感と美しいメロディとが一体となった『For You』をロンバケの上位におきました。

そして大滝さんの『ロングバケーション』の次のアルバム、『イーチタイム』ではやっぱり『ナイアガラムーン』と『ロンバケ』のいいところをあわせたモンスターアルバムを作って欲しかった…。『イーチ』がロンバケの延長線上にあるアルバムだったのはやっぱり個人的にはすごく不満はあります。

今回紹介した10枚はどれが一位になってもまぁ納得はできるなという感じがします。それでもやはり5位以上と6位以下の間に壁はあって、さらに3位と4位の間にも壁があるきがしますね。事実、ランキングを作る過程で上位の三枚で一位が何度も入れ替わったりしていました。ここら辺の裏話もいづれ編集後記という形で書いてまとめたいと思います。

お付き合いいただきありがとうございました。100位から1位まで、全部で10万字ぐらいになったのでちょっと短めの小説一本ぐらいの分量ですよね。

全部読んでくださったかた、ありがとうございます。

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