2枚目A面
バースデイ ”Birthday”
にぎやかなロックナンバー。
このようにはっちゃけたビートルズや荒々しいビートルズが多く聴けるのも本作の魅力。
ヤー・ブルース “Yer Blues”
ホワイトアルバムって改めて聴いてみるとブルースとかカントリーとか多くて、誤解を恐れずに言うともっとも「ロック」なビートルズのアルバムだし、彼ら流の「ブルース/ カントリー」アルバムだったんじゃないかなと。
ブルースをラウドに演奏して見せたこれなんて正にそうですね。
ただ、ジョン意外の曲はこなれてない感はあって同じくカントリーやブルースを基盤にしてロックを展開してた同時代のストーンズに比べるとだいぶいびつではあると思います。
それが狙い通りなのかは分からないけど。
あとはアコースティック&シンプルなアルバムですよね。
エヴリボディーズ・ゴット・サムシング・トゥ・ハイド・エクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー ”Everybody’s Got Something to Hide Except Me and My Monkey”
ジョン作によるハードロックナンバー。ビートルズで1番長い曲名。
ビートルズはこういう荒々しいロック曲も書けるんだぞと、ビートルズに対して大人しいイメージを抱いているひとにぜひ聴いてほしいナンバー。
セクシー・セディー “Sexy Sadie”
この曲が無ければマハリシ・マヘシ・ヨギの名前も醜聞もビートルズの瞑想体験も今日ほど語られていなかったんじゃないかなと。
ヘルター・スケルター ”Helter Skelter”
ポール作の激しいロックナンバー。ザ・フーをお手本にしてつくられたという。
もっとも最初期のヘビーメタル曲といわれたりしています。
が、ちょっとその見方は僕は懐疑的で、もっとそれにふさわしい曲はこれ以前に沢山ある気がします。
ポールの弁によると出来る限りラウドでダーティなサウンドを目指したとのことですが、なんとなくお上品なかんじがするんですよね。
声質の問題でしょうか。歌い方もやっぱり上品な感じがしてしまいます。
これよりだったらシングル盤の「レヴォリューション」の方がヘビーです。
それこそお手本になったザ・フーの方が何倍もラウドでダーティだし、僕はキンクスの「ユー・リアリー・ガット・ミー」をメタル・ハードロックの最初期曲と位置づけたいですね。
僕はオリジナルの「ヘルター・スケルター」より、日本のメタル・ハードロックバンドのVOW WOWのカバーバージョンの方が好きです。
古参のビートルズファンに怒られそうですが。
レヴォリューション1 “Revolution 1”
シングル、「ヘイ・ジュード」のB面曲「レヴォリューション」のスローバージョン。
シングルの激しいロック調のアレンジとは打って変わってアコースティックギターをベースにしているゆったりとした演奏。
いかにもジョン・レノンらしい詩作が独特でいいですが、僕は断然シングルバージョンの方が好きですので、この曲についてはいずれシングル盤の「レヴォリューション」を語るときに語りたいとおもいます。
レヴォリューション9 ”Revolution 9”
8分を超えるビートルズの曲の中で1番長い曲。歌や明確な演奏もなく、現代音楽やサウンドコラージュに近い。
ビートルズの中でも一、二を争う不人気曲です(笑)。
ビートルズの曲をワーストからベストまで選ぼうという企画では、大抵下位か場合によっては再開に選ばれることが大半で、その理由はポールとリンゴが参加していないことや、曲の体裁をとっていないなどの論拠によるもの。
しかしどうなんでしょう。この曲が他でもないビートルズのアルバムに入っていることで「こういう音楽もあるんだな」ということの認知に対しては、かなり役立ったのではないでしょうか。
そういった意味でも「聴く」に値するとおもいますし、重要な曲だと思います。
その影響力がいかほどなのかちょっと図れませんが。
ファッションブランドNUMBER (N)INEのブランド名はここから取られました。
「ビートルズらしさ」とはなにか
曲紹介前に、本作には肯定派と否定派がきっぱりわかれやすいということを書きました。
残念ながら、僕は後者の否定派に近いです。理由はやはり曲そのものは悪くないのですが、アルバムとして見たとき、まとまりに欠くのと、ビートルズらしさをあまり感じられず、それぞれのソロのように聴こえるという理由からです。
それではビートルズらしさとは一体なんなのでしょうか。
それを説明するのにうってつけの曲があります。
「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」
1995年にリリースされた「フリー・アズ・ア・バード」(Free as a Bird) 、続く1996年リリースの「リアル・ラヴ」(Real Love) 、は解散後から実に四半世紀ぶりのビートルズの新曲としてリリースされました。
ジョン・レノン亡き後、彼の未発表曲を元に製作されたこの2曲。
誰が聞いてもこれはビートルズの新曲だ、と納得してもらうハードルは相当高かったと思います。
これは再結成したバンドが新曲を発表するときに最初にぶち当たる壁だとおもうのですが、さすがビートルズ。
この壁を難なく超えてきました。
特に第一弾として発表された「フリー・アズ・ア・バード」はこれでもか、というぐらいビートルズっぽさを感じるできばえになっています。
まずイントロはいきなりリンゴ・スターの独特な間とサウンドのドラムです。
続いて入るジョージのスライドギターのフレーズは、まあ本人がやっているから当然なんですが、「ああ、これこれ、これだよね、ジョージのギター」というようなフレーズ。
このようにイントロですでに「ビートルズ」っぽい要素が満載。
そのあとでジョンの歌が始まり、ブリッジではポールが歌います。
プロデューサーはオリジナルメンバーの3人に加えてELOのジェフ・リンが担当。
彼もELOの活動を通して、ほとんどパロディとでも揶揄されかねないようなビートルズっぽいサウンドを追求したきた人物でしたので、この人選も適切でした。
第二弾は「リアル・ラブ」。
「フリーアズアバード」と比べると露骨なビートルズ的要素は少なめ。
ポールが歌うパートもない。ビートルズの新曲というより、ジョン・レノンの新曲にもとビートルズの面々がゲスト参加しているように聴こえます。
曲としては悪くないどころか名曲だとおもいますが、今一つフリーアズアバードより人気がなかったり評価が低かったりするはそのせいではないでしょうか。
おそらく発表順が逆だったらこのプロジェクトの受けとめられかたも、もっと違っていただろうとおもいます。
「これはビートルズの新曲として認められない」
という声が大きくなっていたのではないでしょうか。
ビートルズらしさとは
こうしてこの2曲を聴いてみると、ジョン・レノン、ポールマッカートニー、ジョージ・ハリソン、リンゴ・スター、4人のそれぞれの強烈な個性がビートルズをビートルズたらしめていたんだなと改めて思い知らされます。
それぞれ固有の音、リズム、がある。
そして、それががっちり重なるときにあのビートルズのマジックがうまれるのです。
その4人の個性がぶつかりあう、その輝きこそを僕はビートルズの核であると、とらえます。
個人がばらばらで録音したり、メンバーが欠けている曲が多かったりのホワイト・アルバムはあのときの4人が感じられず、どうしても寂しく感じられてしまうのです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ビートルズの入門編としては不適切かもしれませんが、ビートルズというグループに対してどう考えているのか、試金石になるようなアルバムだと思っています。
4人の息があってぴったりとまとまっている、そんなビートルズが好きな筆者としては非常に複雑な思いをいだいてしまうアルバムです。
しかし、名曲、後世に大きな影響を与えた曲が沢山詰まっているアルバムであることは事実です。
ビートルズを好きな人はもちろん、これから真面目に聴いていこうという人には避けられないアルバムだとおもいます。