あらすじ
都内のごく平凡なサラリーマンの「僕」は、ある日営業からの帰りに昔住んでいた街を通りかかる。
当時の面影を微かに残したその街は「僕」が学生時代に深くかかわっていた3つのバンドに関する記憶をよみがえらせるのだった。
2004年以降の00年代の音楽を取り巻く状況とともに3つのバンドの軌跡と「僕」の成長を描く長編小説。
第一部「すとれいしーぷす」編
- 【第一話】W3は柳のバンドだった。少なくとも僕にとってはずっとそうだった。
- 【第二話】僕は出会ったその日から柳とバンドを組みたいと強く思っていたが中々言い出せないでいた。
- 【第三話】僕たちは可能な限りその四文字を頭から追い出して生活していた。
- 【第四話】石田さんはそれを読むと吹き出して「まじめにやれ」と笑いながら石崎さんに軽くチョップした。
- 【第五話】「ではそろそろ出発します、よろしくお願いします」と無駄に大きな声でリーダー格が営業マンに言って、僕たちは看板とパイプ椅子を持ってぞろぞろと来た道を戻り始めた。
- 【第六話】オーバーサイズのTシャツやパンツ、CARHARTTのニット帽、Timberlandの靴
- 【第七話】都心では何もかもがディズニー・ランド方式だ。本当に欲しいものは並ばなければ手に入らない。
- 【第八話】彼女は僕にとってはまぶしすぎる存在だった。だからこれ以上彼女と深い交流をしようと言う考えは全く僕の頭にはなかった。
- 【第九話】気が付くとそこはサンクトペテルブルクではなく仙台で午後3時過ぎだった。
- 【第十話】僕の周りは当時は笑顔であふれていたような気がする。笑っていないのはいつも僕だけだった。
- 【第十一話】曲が始まってしばらくすると不思議と周りの雑音が消え、聞こえるのはギターと歌だけになった。
- 【第十二話】曲の世界観を広げるか深めなければならない。シリアスなムードを獲得しなければならない。だが、その方法が全くと言っていいほど分からなかった。
- 【第十三話】そうだったかもしれない可能性を考えることは辛いことだし、意味のない事だ。しかし、そうとは知りつつも何度も繰り返して考えてしまう。
- 【第十四話】上京してから初めての冬が、すぐそこまで来ていた。
第一部のサウンドトラック。
第二部「絶対安全毛布」編
- 【第一話】フェイスブックの更新は皆途絶えている。
- 【第二話】このアーティストのここが凄いと熱っぽく語る彼らの目は澄んでいた。そしてその瞳の奥にはしっかりとした裏付けがあった。
- 【第三話】ガンガン鳴っているはずの音楽がふっと聴こえなくなる感覚があった。彼女の目は心なしか少しうるんでいるようにも見えた。
- 【第四話】本当はそんな話をするつもりはなかったが、店の照明の暗さが何故かそういう気分にさせていた。
- 【第五話】九月だったが、まだ暑く日差しの強い日で、ホーム横の木々の緑が五月のように色濃く見えた。
- 【第六話】僕たちは広い公園や河川敷に行き、寝転がって音楽を聴いたり、空をずっと眺めたり、くっつきあってゴロゴロ転げてお互いの心臓の鼓動を聞きあったりした。
第三部「W3」編
- 【第一話】それは僕の心をほんの少し癒してくれるが、同時にかなりキツく痛めつけてくる。
登場人物
「僕」
青森県から上京してきた都内のごく平凡な大学生。柳とW3を結成する。
現在は都内のごく平凡なサラリーマン。営業職。ある日新規取引先からの帰りに、昔住んでいた町を通りがかり、昔のことを思い出し始める。
2018年「現在」の「僕」のオールタイムベスト10アルバム
- The Velvet Underground & Nico / The Velvet Underground
- Jordan:The Comeback / Prefab Sprout
- Huts / The Blue Nile
- 『ハイファイ新書』相対性理論
- Endtroducing… / DJ Shadow
- For Emma Forever ago / Bon Iver
- Closing Time / Tom Waits
- Take Care / Drake
- There’s A Riot Goin’ On / SLY & The Family Stone
- Black Radio / Robert Glasper
2004年当時の「僕」のオールタイムベスト10アルバム
- The Stone Roses / The Stone Roses
- English Settlements / XTC
- (the best of) New Order / New Order
- The Queen Is Dead / The Smiths
- The Velvet Underground & Nico / The Velvet Underground
- The Bends / Radiohead
- 『Singles』フリッパーズ・ギター
- 『SAPPUKEI』Number Girl
- synchronicity / THE POLICE
- Ziggy Stardust / David Bowie
柳
「僕」と同じ大学の夜間部に通う長身のギタリスト。
長身で目は前髪で隠れがち。あまり人と話したがらないが言いたいことははっきり言う。音楽だけでなく文学や映画にも精通しており、出自も謎が多い。
サーストン・ムーアに雰囲気が似ている。
高岸 亨(たかぎし とおる)
「僕」と同じ大学で同級生。石川県出身。
最初は「僕」同様の冴えない大学生だったが、持ち前の行動力でメキメキと頭角を現し始める。「僕」とバンドを結成する。バンド、StraySheepsのリーダー兼ギターボーカル。
錦 侑里(にしき ゆり)
石田さんや石崎さんの後輩。バンド、絶対安全毛布のボーカルと作詞を担当。
所沢が実家。
石田 恵(いしだ けい)
池袋にキャンパスのある大学の2年生。
リッケンバッカーベースを操り、バンド、エーテルワイズではメインソングライターでツインボーカルの一角を担う。
初期と中期のロキシーミュージックが好き。
群馬県高崎市出身で石崎さんと幼馴染。
2004年当時の石田さんのオールタイムベスト10アルバム
- ロキシー・ミュージックのアルバム全部
- Stop Making Sense / Talking heads
- 『桜の木の下』aiko
- 『NEU』POLYSICS
- 『evergreen』my little lover
- 『黒船』 サディスティック・ミカ・バンド
石崎さん(ザッキーさん)
石田ケイの幼馴染でドラマー。大学も同じだが、付き合ってはいない。高校の時は柔道をやっていた。
硬派で筋肉質な見た目と裏腹に渋谷系やネオアコなどを好む。
プログレも好きでやたらとレパートリーにいれたがる。
石崎さんの2004年のアルバムオールタイムベスト10
- Third / Soft Machine
- Areazione/Area
- Fragile / Yes
- Reading, Writing and Arithmetic / The Sundays
- Love / Aztec Camera
- Steve McQueen / Prefab Sprout
- Huts/The Blue Nile
- 『深海』Mr. Children
- 『Review』GLAY
- 『女性上位時代』ピチカート・ファイブ
高良くん
八王子市の山に囲まれた私立大学に通う2年生でラッパー。
「僕」とモデルルームの看板もちのアルバイト先で知り合って「僕」がヒップホップにのめりこむきっかけを作る。
佐々木君
仙台の大学に通う「僕」の高校の時の友達で「僕」とバンドをやっていた。
ベーシストでバイク乗り。
「僕」に90年代以降のUK,USロックを教えた一人。
佐々木君の2004年のアルバムオールタイムベスト10
- Up the Bracket /the Libertines
- Room on fire / the Strokes
- OK Computer / Radiohead
- London Calling / the Clash
- Screamadelica /Primal Scream
- Definitely Maybe / Oasis
- Siamese Dream/The Smashing Pumpkins
- 『退屈の花』グレイプバイン
- 『8』The Yellow Monkey
- 『ロメオの心臓』Blankey Jet City
成戸由紀(なりと ゆき)
写真が趣味の「僕」のクラスメイト。
僕たちのバンドのスナップショットをよくとってくれていた。
成戸の2004年のアルバムオールタイムベスト10
- 『MUGEN』サニーディ・サービス
- 『Spangle call Lilli line』Spangle call Lilli line
- 『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』Number Girl
- 『Camera Talk』Flippers Guitar
- 『Orange』フィッシュマンズ
- BE HERE NOW / Oasis
- 『imagination』クラムボン
- 『スピッツ』スピッツ
- 『加爾基 精液 栗ノ花』椎名林檎
- 『さくらの唄』Going Steady